運用に由来する価値
運用による価値は、デジタルビジネスの基盤であり、コストの削減、効率とスピードの向上が含まれる。モジュラーコンポーネントの開発、再利用可能なデジタルコンポーネントの創造、自動化、オープンネスと機敏性を高めることによって、この価値を創造できる。
セメックスは顧客体験の向上を図るとともに、広範囲にわたって、運用効率やアプリのコスト・トゥ・サーブの削減に力を注いだ。
エコシステムに由来する価値
ここに含まれるのは、企業のエコシステムの構成メンバーに由来する収益や、他社との提携を通じて、顧客や事業に生じる新たな価値である。このタイプの価値は最も見過ごされやすく、リスクが高いものとして先送りされやすい。しかし、企業がデジタル対応型・提携ベース型のモデルに移行するにつれ、エコシステムに由来する価値の重要性は増し、収益にも大きく影響するようになる。
ほぼすべての企業が、リーチ(より多くの顧客にアクセスすること)とレンジ(より多くの商品とサービスを加えること)の両面で、パートナーを利用することで、エコシステムから大きな価値を生み出すことができる。
セメックスは、
デジタル価値を創造するための行動
いろいろなタイプの価値が明確になったところで、筆者らの研究から明らかになった、デジタル価値を創造するカギとなる行動を紹介しよう。
チャンスを見つけ出す
まずは、自社の業界の枠を超えて考えることが必要だ。デジタルサービスの核心は、次に来そうなもの、これまで不可能だと思っていたことについて想像力を働かせ、顧客のためにまったく新しい価値提案を作り出すことにある。
たとえば、eコマース企業のショッピファイは、業界を超えたさまざまなパートナーが顧客を全過程で支援できるプラットフォームを提供することで、オンラインビジネスの領域の可能性を引き出した。
このプラットフォームのサービスには、ブランド構築、オンラインプレゼンスの創出、オンラインストアの設置、販売、ロジスティックスと発送、支払処理、日常業務の管理が含まれる。
どの活動もそれ自体でビジネスになるが、ショッピファイは、顧客の全領域でのニーズを満たす統合されたソリューションを提供することで価値を創出している。そして、2021年の米国市場におけるeコマース売上の10.3%を占め、いまやアマゾン・ドットコムに次ぐナンバーツーの企業となっている。
それぞれの領域でチャンスを見つけ出すには、まず典型的な顧客がたどる過程を最初から最後まで、自社の守備範囲ではないものも含めて、よく観察することだ。そして改善の方法を検討する。補完的サービスを追加するために他社と提携し、ワンストップのプラットフォームをみずから所有してもよい。