以下は、6つの異なる業界を比較した例である。評価額の変化に対する各要因の影響度合いを示している。

 企業がコントロールできる4つの変数の中でも、特に収益と利益率が重要であることは、筆者の分析でも確認された通りだ。しかし、どの業界にも一律に当てはまるわけではない。実際、特定の業界においては、経営者の認識からもこの点が明らかになっている。

 1つ目の図表が示すように、インタラクティブメディアおよびサービス業界においては売上高、半導体企業では利益率が主要なバリュードライバーになる。ホテル業界は、利益率と株主への現金還元に大きく依存している。

 大手テック企業にとって収益の伸びが相対的に重要であることはよく知られているが、エレベーター業界も同様に、収益が重視されていることはあまり知られていない。実際、筆者らのクライアントであるいくつかのエレベーター企業は、短期的な利益率を重視することで、企業の評価額と長期的な利益の両方を毀損していることに気づいていなかった。

 半導体業界とタイヤ業界は似ており、どちらにとっても利益率が非常に重要だ。ただし、筆者がタイヤ企業のCEOと重ねてきた会話から判断すると、総合的に利益率を重視している経営者は多くない。また、ホテル業界では利益率と株主への現金還元が重要であることが広く理解されているが、包装食肉企業では評価額を上げる重要な要素として注目されていないようだ。

 したがって、これらが示す少なくとも半分のケースでは、主要なバリュードライバーは先験的に明らかなものではない。何が企業価値評価を押し上げているかを知ることで、何に注力すべきかがわかる。