戦略プランニングを真に「戦略的」なものにするためのアプローチ
Mathieu Labrecque
サマリー:戦略のプランをつくることに本当に意味はあるのだろうか。時間をかけて用意しても、たいていの戦略が毎回同じような形に落ち着き、変化の激しい環境に適応したものになっていない、と懐疑的に見る人は少なくない。本... もっと見る稿では、戦略プランニングの目的と、戦略プランニングを真に「戦略的」なものにするためのヒントを提示する。まずは戦略プランニングとそうでないものを区別することから始める。さらに戦略プランニングの目的を達成するための行動ルールを紹介する。 閉じる

戦略プランニングの目的と行動ルール

 筆者はこれまで長年にわたり、企業、政府機関、非営利組織向けに、戦略プランニングのワークショップを行ってきた。そのようなワークショップでは、組織を成功に導くために、最近の変化と未来のトレンドを検討し、それらにどのように向き合うべきかを考える。

 ワークショップの開始前には、このようなことをしても時間の無駄なのではないかと感じている参加者が少なくない。「新しい戦略プランなんて、放っておいてもいつの間にか生まれるものだ。しかも、古い戦略プランと似たりよったりのものにしかならない」などと考えるのだ。

 しかし、戦略プランニングの内容を単に行動のプランをつくることに限定して考える必要はない。というより、そうであってはならない。戦略プランニングは、戦略のエクササイズであるべきだ。

 重要なことは、戦略的なものと戦略的でないものをはっきりと区別することだ。本稿では、この点を掘り下げて検討する。具体的には、まず戦略プランニングの目的について論じ、そのうえで、目的を達成するために実践すべき行動ルールをいくつか示したい。

戦略プランニングの目的とは

 戦略とは、競争相手との関係でみずからのポジショニングを定めることだ。この点は、営利企業であろうと、政府機関であろうと、非営利組織であろうと変わらない。

 このように述べると、さっそく異論が聞こえてきそうだ。そこでまず、指摘しておこう。競争相手が存在しない組織もあるのではないかと思う人がいるかもしれないが、そのようなことはない。どのような組織も例外なく、顧客や人材や資金やリソースをめぐってライバルと競争している。

 たとえば、自動車大手のメルセデス・ベンツは、フォード・モーター、BMW、ゼネラルモーターズ(GM)といった競合企業との関係で自社のポジショニングを定めている。メルセデス・ベンツは、製品構成、プロダクトデザイン、価格、カスタマーサービス、ブランドなど、顧客の選択に関わる戦略上のファクターについて自社のポジショニングを決めてきた。

 しかし、従業員や納入業者など、顧客以外の重要なステークホルダーを引きつけることを目的に、ポジショニングを決める組織もある。たとえば、グーグルは、採用する人物を厳選していることで有名だ。その点、優れた働き手を自社に引きつけるうえで有効な戦略上のファクターとしては、給料、昇進の見通し、労働条件、組織文化などがある。

 営利企業だけでなく、政府機関や非営利組織にも競争相手は存在する。政府機関は、ほかのすべての政府機関と予算を奪い合い、非営利組織は、ほかの非営利組織と助成金を奪い合う関係にある。

 このような組織は、ほかの政府機関や非営利組織と人材や物資も奪い合っている。活動する分野は違っても、輸送やソフトウェアなど、同じニーズを持っている組織同士が、重要な物資やリソースを奪い合う場合がある。

 ステークホルダーとの関係について理解を深めることも重要だが、それは戦略プランニングのひとつの要素でしかない。戦略プランニングにおいては、ステークホルダー間の関係を明らかにすることも重要だ。

 たとえば、従業員と良好な関係を維持できれば、人材の争奪戦でライバルより優位に立てるだけでなく、従業員のパフォーマンスが向上する。その結果、顧客を引きつける効果も期待できるのだ。

 以上の点を踏まえて、筆者は戦略プランニングを次のように定義したい。すなわち戦略プランニングとは、主要なステークホルダーが相互作用を通じて好循環を生むようなシステムを築き、その好循環によって、持続可能な競争上の優位性をつくり出す方策を考えることである。これを正しく実践できれば、あなたの組織は、競争相手より有利な立場に立ち、言ってみれば、成功への追い越し車線を走ることが可能になる。