大胆に抱負を設定する

 最高の仕事ができるように従業員のモチベーションを刺激し、独創的なアイデアにインスピレーションを与えるようなパーパスを策定するのは、容易なことではない。単なるスローガンを超えて、自社の軌道を形づくるような強い意志を持つには勇気がいる。

 パーパスがあることは、パーパスステートメントがあることと同じではない。パーパスは実行することそのものであり、パーパスステートメントは復唱するものだ。「大胆であれ」というのは、何も「地球を救え」「世界を変えろ」ということではない。パーパスは、企業や業界としてのあり方、そしてすべてのステークホルダーへの貢献に対して誠実なものでなくてはならない。

 ヒューバート・ジョリーがベスト・バイのCEO時代に取り組んだことは、その好例だ。ベスト・バイの「技術を通じて人々の暮らしを豊かにする」というパーパスは、同社のあらゆる活動に浸透していた。十分なサービスを受けられない地域にテクノロジーセンターを設立したことも、その一つである。

 WD-40では「ポジティブでいつまでも残る記憶を創造する」というパーパスに導かれて、従業員は毎日職場に通い、自分自身よりも大きな何かに貢献し、新しいことを学び、説得力のある価値観によって解き放たれる。幸せになって家に帰れば、幸せな従業員は幸せな地域社会に貢献するという考え方なのだ。

 これは大胆な抱負である。同社のラテンアメリカ・カリブ海地域担当ゼネラルマネジャーのティアゴ・ダミーコは、次のように言う。

「当社の文化は、安心と帰属意識を実感できるような、ポジティブで人を力づける環境を提供しています。だからこそ、コモングッド(公共善)のために奉仕し、貢献したくなるのです。当社の価値観は、行動を起こしたり、学んだりする自信を得られる枠組みとして機能しています。従業員の成長を促し、その家族や地域社会にポジティブな影響を与える行動へと駆り立てるのです」

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 経営面でも競争面でも企業を際立たせるような、持続性のあるパーパスを形成するには、リーダーシップチームがその道を切り開かなければならない。当然ながら、それは簡単な仕事ではない。しかし、最高の人材を引き寄せ、最高の満足を顧客に与え続けるには、誠実なパーパスを実現していくことが必須条件になりつつある。

 いまから数年後、あなたの組織が話題に上る時、パーパスはその話の中心になっているだろうか。


"How Executive Teams Shape a Company's Purpose," HBR.org, November 03, 2022.