
資金、顧客、投資家、従業員、企業文化に対処する
株価は高値から20%下落し、正式に弱気相場に突入した。現時点ではまだ景気後退に入っていないとしても、今後数四半期で景気後退に入ると、多くのエコノミストが予測している。スタートアップのCEOは景気後退に備え、そして生き残るために、どのような戦略や戦術を取るべきか。
筆者は過去30年以上にわたって、ソフトウェア業界に身を置き、3社のCEO、10社の取締役、そして数多くの企業の顧問を務めてきた。ドットコムバブルの崩壊、2008年の金融危機、そして新型コロナウイルス感染症による不況の中で、企業を率い、助言を行なってきた。
景気後退の状況はそれぞれに異なるが、筆者の経験によれば、経済環境が悪化した際にスタートアップが講じるべき重要な対策がいくつかある。
ランウェイを延ばすための手段を「いますぐ」講じる
景気後退に陥ると、資金調達は相当難しくなる。ランウェイ、つまり会社が立ち行かなくなるまでに残された時間を延長する必要があるため、手持ちの資金で生き残るための計画を立てなければならない。
支出は、製品やサービスをより改善する、あるいは新たに売上げを拡大する目的に限ることだ。「あるとよいもの」への出費は控えなくてはならない。取り組みは縮小し、短期的に成功する可能性のあるものだけを優先させる。
景気後退期は「キャッシュ・イズ・キング」であるため、事業拡張期を乗り切るための十分な資金を確保しておかなければならない。クレジットライン(信用与信枠)を利用して、自己資本を補強すべきである。金利が上昇している現在でも、金利は依然として合理的であり、株式による資金調達を新たに行うよりも安く済む。
優良顧客を積極的に取り込む
景気後退は、CEOであるあなたにとって、最も重要な顧客との関係を強化する絶好の機会だ。彼らもまた、景気後退の危機を感じていることを忘れてはならない。顧客は購入先企業のCEOに会いたがるもので、これを機会にみずから顧客を訪問し、営業担当者とともに時間を過ごすべきである。対面でのミーティングができない場合は、ズームで行う。営業が苦手ならば、それを克服することだ。
技術畑出身のある創業者兼CEOは、最初は営業を苦手に感じていたが「営業の重要さを知った」と最近、筆者に語った。もしあなたがこれまで、自分の時間をプロダクトに費やすのが最善だと考えてきたのならば、再考すべき時である。不況下における最も適切な時間の使い方とは、顧客と対話し、売上げを拡大することだ。
新規顧客を開拓するよりも、既存顧客により多く販売するほうが容易で、コストも安いことを忘れてはいけない。誰もがすべての経費を見直す景気後退期は、特にそうだ。
B2Bビジネスであれば、顧客を訪問することで、彼らがどれだけ満足しているか、解約のリスクがあるかどうかについて、現実的な情報を得ることができる。B2Cビジネスならば、一定期間サービスや商品を利用してくれた顧客に対して、インセンティブを提供するリワードプログラムなどの取り組みに投資し、最優良顧客が自分は大切にされていると感じられるようにする。
景気後退期には、企業は支出を重視し、新しい取り組みへの投資を控えるため、顧客の解約リスクは高まる。解約率の高さは、企業のバリュエーションに直接影響する。CEOであるあなたが率先して模範となれば、従業員はあなたの努力を認めるはずだ。