会話への利用

 LLMは、会話型AIやチャットボットの中核部分での利用が増えている。これらは既存の会話用テクノロジーに比べ、会話への理解と文脈の把握を、より高いレベルで可能にする能力を秘めている。

 フェイスブックが会話用に設計したBlenderBotは、文脈を維持したまま人間との長い会話を続けることができる。グーグルのBERTは検索クエリを理解するために使われており、同社のチャットボットエンジンであるDialogFlow(ダイアログフロー)の構成要素でもある。

 グーグルのLaMDAも、会話用に設計された別のLLMだ。同社のエンジニアの一人はLaMDAと話すうちに、これは意識を持つ存在であると信じるに至った。会話で使われる言葉を、過去の会話に基づいてモデルが予測しているにすぎないという事実を考えれば、これは大した成果である。

 こうしたLLMはどれも、会話の達人のような完璧さを持つものではない。人間がつくった過去のコンテンツで訓練され、人種差別や性差別や偏見に満ちた言葉に訓練の中で触れれば、何であれ再現する傾向がある。開発した企業はヘイトスピーチの排除に取り組んでいるものの、いまだ完全には成功していない。

ナレッジマネジメントへの利用

 LLMの新しい用途の一つは、組織内にあるテキストベースの(潜在的には画像や動画ベースの)知識を管理する手段として使うことだ。体系的な知識基盤の構築には多大な労力を要するため、多くの大企業では一定の大きな規模で自社の知識を管理することが難しい。

 しかし、組織内にあるテキストベースの特定の知識群に合わせて、モデルの訓練がファインチューニングされていれば、LLMは知識の管理に役立ちうることが複数の研究で示されている。LLMにより構築された知識基盤から、必要な知識にアクセスするには、質問をプロンプトとして入力すればよい。

 一部の企業は商用LLMの主要プロバイダーと協力し、LLMによるナレッジマネジメントのアイデアを探求している。一例としてモルガン・スタンレーは、オープンAIのGPT-3を活用して資産管理に関するコンテンツについてファインチューニングを実施した。これによりファイナンシャルアドバイザーは、社内にある既存の知識の検索と、顧客向けにカスタマイズしたコンテンツの作成の両方を容易に行うことができるようになった。

 このようなシステムの使用者は、効果的なプロンプトを作成するための訓練や支援が必要になると思われる。そして現時点では、LLMから出力される知識は適用前に編集や見直しが必要となりそうだ。こうした課題への対処が実現すれば、LLMによってナレッジマネジメントの分野は再び活性化し、格段に効果的な規模拡大が可能になるかもしれない。

ディープフェイクやその他の法的および倫理的な懸念

 ジェネレーティブAIのシステムが、多くの法的、倫理的問題を急速に引き起こす様子を私たちはすでに目にしている。AIによって生成され、本物を装っているが実際には違う「ディープフェイク」の画像と動画が、メディアやエンタテインメント、政治の世界に現れている。

 これまで、ディープフェイクの作成には相当のコンピュータのスキルが求められた。しかし今後は、ほぼ誰にでもつくれるようになる。オープンAIは、DALL-E 2の画像それぞれに独自の「透かし」を入れることで、フェイク画像の防止に努めている。だが将来的には、さらなる防止措置が必要となりそうだ。ジェネレーティブ動画の作成が主流となれば、なおさらである。

 ジェネレーティブAIはまた、何をもってオリジナルかつ独占所有権を伴うコンテンツとするのかについて、数々の疑問を生じさせる。生成された文章と画像は、過去のどのコンテンツとも完全に同じではないため、システム提供側は「プロンプト作成者の所有物である」と主張する。だが、それらは明らかに、モデルの訓練に使われた過去の文章と画像からの派生物だ。この種のテクノロジーは今後何年も、知的財産を扱う弁護士の仕事を大量に増やすことになるのは間違いない。

 本稿で挙げた数例のビジネス用途を見れば、組織とそこで働く人々にジェネレーティブAIがどう役立ちうるかについて、現在、私たちは表面しか理解していないことが明らかだろう。

 たとえば近いうちに、文字や画像ベースのコンテンツの大半またはすべての作成において、これらのシステムを使うことが習慣になるかもしれない。メールや手紙、記事、コンピュータプログラム、リポート、ブログ、プレゼンテーション、動画などの初稿や原案を、ジェネレーティブAIに提供してもらうのだ。

 こうした機能の開発は、コンテンツの所有権と知的財産の保護に重大かつ予期せぬ影響を及ぼすのは間違いない。だが同時に、知識労働とクリエイティブな仕事に革命をもたらす可能性も高い。AIモデルがこれまでと同じように、今後も短期間で発展し続けるものと仮定すれば、そこから生じうる機会と影響のすべてを想像することなど、到底できない。


"How Generative AI Is Changing Creative Work," HBR.org, November 14, 2022.