複数のサプライヤーを持つことにより、レジリエンスが高まる

 多くのメーカーは、2社のサプライヤーを併用することをコスト削減の手立てと位置付けている。サプライヤー同士を競わせて、部品を安く仕入れようという狙いである。しかし、トヨタの発想は異なる。2社のサプライヤーを併用することにより、レジリエンスを確保しようと考えているのだ。

 たとえば、ある車種のハンドルをすべて特定のサプライヤーに発注し、別の車種のハンドルをすべて別のサプライヤーに発注する。この2社のサプライヤーは、次に市場投入される新しい車種のハンドルの受注獲得を目指して、常に競争し続けることになる。しかし、それは価格ではなく、イノベーションとケイパビリティをめぐる競争だ。

 部品価格を非合理なほど安く抑えることは妥当でない。そして、どのくらいの価格が妥当かはトヨタがよく理解している。サプライヤーは、この点を十分理解したうえで行動しているのだ。

「私たちが望んでいるのは、サプライヤーが価格の面で受注競争をすることではありません」と、ニールセンは述べた。「より優れたサプライヤーになるための競争をしてもらいたいのです」

 トヨタは、サプライヤーがしっかり利益を上げることを望んでいる。利益が上がってこそ、サプライヤーが新しいテクノロジーの開発やデザインの改善に投資することを期待できるからだ。つまり、サプライヤーが利益を上げることにより、トヨタにも恩恵が及ぶと考えている。

「サプライヤーが人材や施設やテクノロジー開発に真の投資を行うためには、明日もビジネスができると認識する必要があります」と、ニールセンは私に語った。「そこで、私たちは供給基盤の安定性を重視しています。競争の恩恵は、長い目で見てこそ現れます。そして、それは主としてテクノロジーとデザインに関わるものです」

サプライヤーとの関係は信頼が土台

 サプライヤーと信頼関係を築き、サプライヤーをしっかり支援することは、TPSの核を成す要素だ。サプライヤーとの関係は、長期的なパートナーシップを土台とすべきであり、取引性が強いものであってはならない。

 サプライヤーが何らかの問題にぶつかった時、トヨタは問題解決の支援を申し出る。そして、サプライヤーもそうした支援を歓迎する。TSSCのボニーニ理事長は筆者に語った。「サプライヤーは、門戸を開いて私たちを迎え入れ、このように私たちに言います。『我々サプライヤーが何かミスをしても、あなた方は我々を処罰しないと知っています。あなた方は、我々サプライヤーを助けようとしている。チームの一員として来てくれたと理解しています』 」

 ボニーニはトヨタのサプライヤー開発部門で働いていた時、生産に関わる問題に直面しているサプライヤーを支援するためにしばしば現場に赴いた。特に、新しいテクノロジーを導入しようとするリスクが高い状況下で、支援を行うことが多かった。そのような機会には、しばしば現場で何週間も過ごし、その経験を通じてサプライヤーとの信頼関係を築いていった。

「非常にタイトなジャスト・イン・タイム方式を実践しようとするのであれば、十分な専門知識に加えて、サプライヤーとの信頼関係が欠かせません。問題が発生した時に、サプライヤーを支援することも必要です」とボニーニは述べた。

「サプライヤーがトラブルに陥った時は、人を派遣して支援します。その際は、問題を解決するのに役立つ技術的スキルを持った人材を送り込みます。復旧計画を監査するための立ち入り調査をしたり、電話で問いただしたりするのではなく、言ってみれば、腕まくりをして、問題解決を手伝うのです。コラボレーションの一環として、そうしたことを行うのです」

 サプライヤーで問題が起こり、トヨタの生産体制に混乱が及ぶ可能性がある場合、トヨタはその問題に注意を払い、サプライヤーと協力して迅速に問題を解決しようと努めているのだ。