1. 難解なことを伝える時は、短い言葉を使う
長く、複雑な文章で書かれたアイデアは、内容を理解するのが難しく、精神的にも消耗させられるため、集中力を必要とする。単語や文章を短くすれば、読み手の好感を得られるはずだ。
ノーベル経済学賞受賞者のダニエル・カーネマンは、著書『ファスト&スロー』の中で、「信頼できて知的だと思われたいのであれば、シンプルな言葉で十分なところに複雑な言葉を使わないことだ」と述べている。彼は、説得力のある話し手や書き手は、「認知的負担」を減らすための努力を徹底して行っていると主張する。
「グラマリー」のようなソフトウェアツールは、読みやすさを数値で表すことで、文章の質を評価している。そのスコアによって、文章サンプルに学年レベルを割り当てている。
たとえば、少なくとも8年生の教育を受けた人(米国の平均的な13歳)向けに書かれた文書は、「非常に読みやすい」と判断される。これは「8年生が書いたような文章だ」ということを言いたいのではなく、論旨が洗練されていて理解しやすいという意味だ。アイデアを容易に理解してもらえれば、説得力も増す。
書くことは技術であるため、練習によって磨くことができる。ベゾスは時間をかけて書く力を上達させた。1997年に彼が初めて書いたアマゾンの株主への年次書簡は、10年生レベル(『ニューヨーク・タイムズ』紙と同等)だったが、その後10年間で、書簡の85%が8年生か9年生のレベルになっている。
たとえば、ベゾスは2007年、アマゾンが新発売したキンドルの利点を、7年生でも理解できるような一つのパラグラフで説明した。
「知らない単語が出てきたら、簡単に調べることができる。自分の本を検索できる。余白のメモやアンダーラインは、クラウドに保存され、失われることはない。キンドルは、すべての本の読みかけの位置を自動的に記憶する。目が疲れたら、フォントサイズを変更することもできる。キンドルのビジョンは、あらゆる言語で出版されたすべての本を、60秒以内に読めるようにすることだ」
ベゾスは難解なことを説明するために、短い言葉を選んだ。物事をシンプルにするということは、内容の知的レベルが落ちるということではない。競合相手を出し抜くということである。