2. 重要な概念を強化するために、印象的メタファーを選ぶ
メタファーは、抽象的なアイデアを身近な概念になぞらえる強力なツールだ。メタファーによって、その場にいながらにして相手を旅に連れ出すこともできる。
有名なカナダ人宇宙飛行士のクリス・ハドフィールドは、才能あるスピーカーであり、TEDトークのスターでもある。彼はメタファーの力を利用して、筆舌に尽くしがたい出来事を表現した。
「打ち上げの6秒前、突然、ドラゴンが火を噴くかの如くロケットはまるで獣のように唸り始めた。ハリケーンの中の小さな葉のようになり(中略)エンジンに火がつくと、巨大な犬の顎の中にいるような感覚になって、体を揺さぶられ、力一杯殴られているように感じる」
「唸る獣」「ハリケーンの中の葉」「犬の顎」はどれも、たいていの人は経験することのない出来事を、具体的なイメージで表現したものだ。
ビジネスにおいてメタファーは、複雑な情報を短く、キャッチーなフレーズで伝えるための近道だ。ウォーレン・バフェットはメタファーの力を理解している。ビジネスニュースや株式市場の動きを見ていれば、競合他社が参入しにくい業界を支配している企業を表す「堀に囲まれた企業」という言葉を聞いたことがあるはずだ。
この言葉が広まったのは、バフェットが1995年、バークシャー・ハサウェイの会議で次のように語ったことがきっかけだ。「我々が最重要視しているのは、周囲に広く、長く続く堀を持ち、誠実な城主のいる素晴らしい経済の城を守っているビジネスを見つけることだ」
城のメタファーは、バフェットと彼のチームが、投資候補を評価するために使用するデータと情報の複雑なシステムを、簡潔かつ鮮明に説明している。
あなたが新しいアイデアや抽象的なアイデアを紹介する時、聴衆はそれを理解するために、無意識に身近なものに置き換えようとする。斬新なメタファーを使って、聴衆の先を越そう。