4. ミッションを繰り返し口に出し、チームをまとめる
1957年、ウィスコンシン州とミネソタ州の広い範囲で停電が発生した。自宅のガレージで医療機器の修理をしていたアール・バッケンは、この分野でイノベーションを起こす機会を見出し、停電になっても稼働し続ける電池式体外型ペースメーカーを世界で初めて開発したのだった。
この時、バッケンの人生のパーパスは、単にモノを修理する以上のものになった。「人々の痛みをやわらげ、健康を回復し、生命を延ばす」というミッションを抱いて生きるようになったのだ。
バッケンはメドトロニックを創業し、それから50年以上経った2018年に他界した。創業以来、同社は大きく変化した。いまでは、従業員9万人が150カ国で働き、同社の医療機器は毎秒2人の患者の命に関わっている。だが、多くが変わっても、変わらないことが一つだけある。メドトロニックの従業員を突き動かしているのは、バッケンを奮い立たせたのと同じ、「人々の痛みをやわらげ、健康を回復し、生命を延ばす」という言葉だ。
バッケンは「リピーター・イン・チーフ」として、常に会社のミッションを前面に押し出し、中心に据えた。94歳で亡くなる直前、彼は従業員向けに動画を撮影し、会社のミッションを繰り返し述べ、ある願いを告げた。「毎日、この言葉を胸に生きてほしい」
ミッションステートメントが引き出しに仕舞い込まれ、ほとんど忘れられているようでは、共通のパーパスに向かってチームをまとめることはできない。ハーバード・ビジネス・スクール名誉教授のジョン・コッターによれば、リーダーのほとんどはビジョンを10分の1しか伝えられていない。「何百人、何千人という人々が、短期的な犠牲を払ってでも協力しなければ、変革は不可能だ」と、コッターは指摘している。
変革を起こすリーダーは、コミュニケーションを過剰に行う。彼らは、あまりにも頻繁にミッションを繰り返すので、それがマントラになる。マントラとは、繰り返されることで強度を増していくステートメントやスローガンのことだ。過剰なコミュニケーションは、その影響力を増大させる。
ミッションが主役でなければならない。文書、メール、プレゼンテーション、ソーシャルメディア、マーケティング資料など、あらゆるコミュニケーションチャネルを通じて、会社のパーパスにスポットライトを当てるようにするのだ。ミッションが示すものを、守らなければならない。
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価値があることを成し遂げるには、チーム、つまり夢や共通のビジョンを情熱的に追い求める集団の働きが必要だ。肩書だけで権力を得たリーダーに従うチームもあるが、成功するチームがリーダーに従うのは、そのようにインスパイアされるからだ。
"How Great Leaders Communicate," HBR.org, November 23, 2022.