3. データに人間味を持たせて価値を創造する
認知的負荷を軽減し、あらゆるデータポイントを興味深いものにするコツは、その数字を大局的にとらえて、人間味を持たせることだ。パワーポイントで統計やグラフを見せるのは、相手の認知的負荷を増やし、精神的なエネルギーを消耗させるだけだ。
数字を示す時は、もう一歩踏み込んで、関心を引き寄せ、記憶に残るような、説得力のあるものにしなければならない。
たとえば、人類は2025年までに年間175ゼタバイト、つまり1兆ギガバイトのデータを生成すると科学者は予想している。あまりに大きな数字で、多くの人はピンとこないだろう。しかし、175ゼタバイトのデータをDVDに保存した場合、ディスクは地球を222周する量になると言ったらどうだろう。それでも大きな数字だが、頭の中に鮮明なイメージを描くことができるため、より興味を引きつける。
有名な宇宙物理学者で科学教育者でもあるニール・ドグラース・タイソンは、科学分野のコミュニケーションの秘訣は「身近なところに概念を埋め込むこと」だと述べている。つまり、データを人が理解できる言葉に変えるのだ。
タイソンがデータに人間味を持たせた例として有名なものの一つが、1997年に米航空宇宙局(NASA)が土星探査機「カッシーニ」を打ち上げた時のことだ。30億ドルという総費用に対して懐疑的な見方があったため、タイソンはテレビのトークショーに出演し、このミッションがもたらす利益を人々に知ってもらうことにした。
しかし、まずはその費用に対するショックに対処しなければならない。そこで彼は、修辞的な方法を用いることにした。この30億ドルは8年間にわたって使われることを説明したうえで、米国人が毎年リップクリームに費やす金額は、NASAがそのミッションに費やす年間額よりも多いことを伝えた。
アイデアの価値を示すためには、データに人間味を持たせ、聞き手に関連付けることである。