
家庭での衝突は
仕事に悪影響を及ぼす
職場におけるネガティブなやり取りが、従業員のウェルビーイングと生産性を損なうことは広く知られている。職場での無礼な言動が従業員に与える影響や、他者から不当な扱いを受けたと感じた時に感情がどう反応するかについて明らかにした研究もある。もっとも、1日のうち、職場で過ごす時間は一部にすぎない。
『ジャーナル・オブ・アプライド・サイコロジー』に先日掲載された筆者らの研究は、多くの人が感じてきた疑問を裏付ける内容だった。家庭での衝突もまた、仕事中のエネルギーや感情に悪影響を及ぼしているのである。
しかし、多くの従業員が家庭における不愉快な経験に意外な方法で対処していることも明らかになった。それは、同僚に救いの手を差し伸べることだ。
この研究を通して、職場にまで波及するようなネガティブな経験に従業員はどう向き合えばいいのか、さらに家庭のストレスを職場に持ち込んでしまう従業員をマネジャーはどうサポートすべきかが浮かび上がってきた。
当初の研究では基本的に、従業員がパートナーにどのようなタイプの無礼な態度を取られたのか、またそうしたやり取りを通して彼らがどう感じたのかを理解することを目的としていた。そこで筆者らは、無作為に選んだ226人の従業員を対象に、最近、パートナーとの間で出勤前に経験した無礼な、または無礼でないやり取りを思い出してもらった。話を聞いた人のうち半数弱が女性で、80%近くが既婚、16%は結婚以外の形で長期的な交際をしていた。また、15%弱がLBGTQ+と回答。参加者はさまざまな業界の幅広い職種に従事していた。
無礼な態度として挙げられた内容は、前日の夜のケンカが翌朝まで持ち越される、朝食の席で互いに相手を無視する、日常の些細な問題でパートナーにキレる、など多岐にわたった。筆者らの予想通り、無礼なやり取りを思い出すよう求められた参加者は、無礼でないやり取りを思い出すよう求められた人よりも気持ちの消耗が激しく、機嫌が悪くなっていた。愛する人から受けた無礼な行為の記憶が消えないと、長時間にわたってエネルギーレベルや感じ方が変化してしまうようだ。