パートナーの無礼な態度が
仕事に与える影響

 では、パートナーの無礼な態度は、職場での従業員の行動にどのような影響を与えるのだろうか。

 この問いに答えるために、筆者らは共働きの夫婦111組に、2週間にわたって定期的なアンケートに回答してもらった。その際、各夫婦のうち一人を選び、勤務時間中の状況について追跡調査も行った。この研究でも、職種はさまざまで、業界は多岐にわたった。大半は女性だったが、性別をコントロールしても結論に影響は生じなかった。

 この調査では、追跡調査される従業員のパートナーに、毎朝の出勤前に自分が相手に対して無礼な態度を取ったかどうかを報告してもらった。追跡調査される側ではなくパートナーに尋ねたのは、対象の従業員が気づいていない場合も含め、パートナーが意図的に無礼な振る舞い(口を利かないなど)をしている状況を確実に把握するためだ。

 そのうえで、追跡調査される従業員には、終業時のエネルギーレベルと感情、さらに帰宅後の夜間の気分について報告してもらった。最後に、彼らの経験と感情が職場での人付き合いにどう影響したかを調べる目的で、業務上の課題や個人的な問題を抱えている同僚に、どの程度の支援を提供したかについても質問した。

 彼らは家庭でのトラブルですでに消耗しているため、同僚への支援を控える可能性がある、というのが筆者らの想定だった。筆者らの過去の研究を含めたいくつか先行研究でも、そうした方向性が示唆されていた。

 ところが、結果は正反対だった。彼らはパートナーから無礼な態度を取られた影響で気分が晴れなかったが、その日の勤務中に、業務上の課題と個人的な問題の両面で同僚を支援したと答える傾向が強かった。さらに、その日の夜に記入してもらった回答から彼らの家庭での感情を評価したところ、個人的な問題について他者に支援を提供した人は、より明るい気分で帰宅していたことが示唆された。

 なぜ彼らは周囲の人を助けるのか、そして、それがなぜ彼らの気分を好転させたのか。

 過去の研究から、人助けには良好な人間関係を構築し、有能感を高め、その日の仕事をよりポジティブに振り返れるようになるといった効能があることがわかっている。パートナーの無礼な態度によって生じた不快な気分を引きずっている人は、意識的か無意識かはともかく、よりポジティブな経験ができる機会を探し求めているのだと、筆者らは考えている。