
抽象的な言葉使いは
どのような印象を与えるか
「今回は人格の選挙です。米国人らしさに投票するのです。ドナルド・トランプが吐き散らかしているようなものではありません。(中略)あれは私たちが国家としてあるべき姿ではありません。この国の誰もが、敬意と尊厳を持って扱われる権利を持っています。すべての人を、一人ひとりどのような立場でも、私たちは良識を持って扱わなければなりません。根本的な良識の問題です。(中略)私たちは米国の魂を取り戻さなければなりません。(中略)私たちは世界を、力ではなく、模範を示すことによって導きます。物事を変えるために、私たちは世界から尊敬を取り戻さなければならないのです」
──現大統領ジョー・バイデンのスピーチから
米大統領選の民主党候補者討論会、2020年1月14日
「ドナルド・トランプはあらゆることを彼自身の問題だと考えています。私は皆さんの問題だと思っています。(中略)あなたの学校、あなたの生活、あなたの未来の問題です。ですから、人種的公平や移民改革、気候変動、銃の安全性について何かをしたいと思うなら、実際に人を集めることができる候補者が必要です。私はすべての選挙で勝ってきました。どの場所でも、どのような時も。私が候補者になると、全米で最も投票率が高くなります。大統領選に出馬している議員の誰よりも、民主党議員として最も多くの法案を通過させてきました」
──上院議員エイミー・クロブシャーのスピーチから
米大統領選の民主党候補者討論会、2020年1月14日
2020年1月、米大統領選の民主党指名争いで序盤戦のカギを握る、アイオワ州の党員集会が始まる3週間前に、デモインで開催された討論会に6人の候補者が出席した。最後に有権者に向けて1分間で決意を示すことになり、ほとんどの候補者が本選で対決するであろう当時の大統領ドナルド・トランプと自分の違いを強調しようとした。
ただし、その方法は人それぞれだった。現大統領のジョー・バイデンは「米国の魂を取り戻す」「力ではなく模範を示す」など、大局的な利害関係を強調する抽象的な言葉を使った。対照的に上院議員のエイミー・クロブシャーは、医療や学校など具体的な問題に焦点を当てた具体的な言葉を使い、選挙に勝って法案を通過させてきたという実際的な実績を強調した。
このようなコミュニケーションスタイルの違いは、表面的なものに見えるかもしれないが、筆者らのほかにもパメラ・スミス、ローラ・ファン、ギル・アペル、アルバート・ハン、アンディ・ウーらが行った研究が示唆するように、具体的に伝えることは受け止め方に大きな影響を与える。
特に筆者らの研究によると、抽象的な言葉は権力やリーダーシップを連想させやすく、一般的に男性は女性より抽象的に話す傾向がある。つまり、ある文脈において、女性が社会的に習得してきたコミュニケーション方法は、時にリーダーとして見られにくくするかもしれない。
男性は女性より
抽象的な言葉を使う傾向がある
筆者らは性別とコミュニケーションスタイルの関係を調べるために、英単語の具体性を評価する4万語のデータベースや、異なる品詞の相対的な抽象度を定義する言語モデル(たとえば、形容詞は動詞より抽象性が高い傾向がある)など、実証されている抽象度の測定基準を用いた。これらのフレームワークを使って、2001~2017年に米連邦議会の議場で話された言葉、2004年にblogger.comから収集した60万件以上のブログ記事、大学生およびクラウドソーシング経由のオンライン参加者の実験データなど、さまざまな場面における言語の抽象度を測定した。その結果は一貫しており、男性はより抽象的な言葉を使い、女性はより具体的に話す傾向があった。
抽象的:トニの冒頭の言葉は、聴衆の期待を膨らませる。
抽象的:モジョ・ジュースは、果汁100%で防腐剤フリー。
抽象的:私たちの新しい取り組みは、私たちを未来へ導き、会社をより革新的で豊かなものにする。