
「受け入れられない自分」を受け入れる
ルーカス B. は、ある有名な巨大企業のCEOを務めている。その会社は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが最も深刻だった時期に、存続が危ぶまれていた。当時、この会社を「もはや、盛りを過ぎた存在だ」と切って捨てるアナリストも多かった。
ルーカスは経営を黒字に戻すための戦略を立案し、取締役会の支持も取り付けていたが、その戦略を実行に移すことに苦戦していた。さまざまな外的要因が妨げになっていると、彼は感じていた。そして、筆者のコーチングを受け始めた時は、自分のリーダーシップのあり方そのものが最大の問題だと指摘されても、受け入れようとしなかった。
しかし、間違いなく、ルーカスのリーダーシップこそが問題の根源だった。といっても、その理由はおそらく、あなたが想像するものとは異なる。
筆者はこれまで20年以上にわたり、CEOをはじめとする最高経営幹部のコーチングに携わってきた。その経験から言えることとして、
ところが、筆者がコーチングを行ってきた企業リーダーの大半にとって、「自分自身の内面」という領域は広大な未開拓地だった。彼らのほとんどは、物事をじっくり考えるよりもまず行動を起こすタイプで、内面の世界に価値があるとはあまり考えていなかったのである。未開拓の領域には、自分が何を感じているのか、感情の引き金になっている要因は何か、人生の初期経験が現在の選択にどのように影響しているかといったテーマが含まれる。
ルーカスをはじめ、彼に似た多くのリーダーが最も関心を寄せているリーダーシップの問題とは、優先順位の決定、意思決定、説明責任、そしてチームメンバーの連携とエンパワーメントだ。しかし、筆者のコーチングでは、リーダーにとってより個人的な3つの問いも同様に重んじている。その目的は、みずからのモチベーションと行動の傾向について理解を深めることだ。
・あなたはなぜ、いまのような人間であり、いまのようなリーダーであるのか。
・あなたは、どのような人間になることができるか。
・あなたの行く手を妨げるものは何か。
筆者が、コーチングを受けるクライアントに向き合う時の基本的な考え方は、一見するとシンプルなものだ。それは、「リーダーが自分自身を変革しなければ、会社を変革することはできない」というものである。よりよいリーダーになるためには、人間としてより成長しなくてはならない。これは、新しい戦略の実行やイニシアチブの変更に失敗したシニアリーダーの長年の経験に基づくものだ。
この難題を克服するには、自分の抱いている固定観念や死角、バイアス、恐怖心、深く根を張った行動パターン、そして正当化など、あらゆる人に大きな影響を及ぼすにもかかわらず、ほとんど意識されていない物事を問い直す覚悟がなくてはならない。
リーダーがみずから自由意志に基づいて、意識的に選択を行っていると思い込んでいるならば、そのような人物は自分を欺いていると言わざるをえない。実際、数多くの研究が明らかにしているように、私たちの行動の少なくとも43%は(場合によっては、もっと大きな割合になる)、意識的な意思決定に基づくものではなく、自動的に、習慣的に、反射的に行われているという。