利益だけでなく、人とのつながりが重要な理由

 筆者が関わってきた企業リーダーの多くは、自分の心が伝えてくる情報にあまり注意を払っていなかった。それでは、自分の感情やそれに基づくニーズに敏感に反応したり、他者の感情やニーズに共感を抱いたりすることが、制限されてしまう。

 これは特に、金銭や権力、評価などの外的報酬を主たるモチベーションにしているリーダーに当てはまる。企業という環境においては、そのほとんどで、これらの要素が人間の価値を決める「シニフィエ」として支配している。

 アンドリュー K. K. というシニアリーダーは、もっぱら自社の利益を基準に自己評価を行っていた。数値という客観的な世界に身を置くことで、自分は安全だという感覚を抱き、心地よく感じていたのだ。彼は、自分の感情と、自分が他者に及ぼす影響に意識を向けた時に生じる不安や不快感に向き合おうと考えたことをきっかけに、心がもたらす情報に関心を払うようになった。

 やがて、アンドリューは、自分が人とつながりたいという欲求をあえて遠ざけてきたことに気付いた。人とつながろうとすれば、自分がより弱い存在になり、外的目標を達成する妨げになると思い込んでいたのだ。しかし、同僚と個人的な関係を持つことを自分に許すようになると、彼らとのコラボレーションが容易になり、以前に比べて素早く対立を解消できるようになった。

 リーダーは、4つ目の情報源である魂が伝えてくる情報に耳を傾けることで、視野が広がり、自分のニーズと他者のニーズのバランスを適切に取ることができる。

 ポーリナ B. は、ある大規模な非営利団体のCEOを務めている。彼女にとっては、この団体の活動の支援対象者が、ずっと精神的エネルギーの強力な源泉になっていた。しかし、コロナ禍で筆者がコーチングを始めた時には、激しい燃え尽き状態にあり、退職も検討するほどだった。

 ポーリナは、筆者とともにそれまでの経験を振り返った。すると彼女は、完璧な仕事ができていないと感じるといつも、保護者としての自己が頭をもたげることに気付いた。自分の至らない点があると、容赦なく自己批判していたのである。内なる批判の声が大きくなればなるほど、ますます自分を追い詰め、さらに細かいことにまで自分が関わろうとした。その結果、いっそう精神的エネルギーが失われていった。

 そこで、ある極めて基本的な問いについて考えることにした。「あなたにエネルギーをもたらすものは何か。あなたからエネルギーを奪うものは何か」というものだ。

 ポーリナがこの問いについて考えると、非営利団体のあらゆる問題に関わろうとすれば、自分が求める完璧主義を徹底できる半面、自分に最もエネルギーを与えてくれるはずの活動に割ける時間や労力が奪われてしまうことに気づいた。彼女は何よりも、現場で職員や支援対象者と一緒に時間を過ごしたり、他の団体のリーダーと交流したりすることで、エネルギーを得ていたのだ。

 ここで見られるパラドックスは、それまで受け入れようとしなかった自分の一部を受け入れるようになればなるほど、CEOやシニアリーダーは自己防衛の必要を感じなくなるということだ。

 今日のエグゼクティブコーチの中核的な役割は、クライアントが自分自身をより深く理解するのを助けること、言い換えれば、真実を受け入れることによって、自由になるのを支援することだ。その出発点は、これ以上ないくらいシンプルな問いにある。「いま、私に見えていないものは何か」


"To Coach Leaders, Ask the Right Questions," HBR.org, November 21, 2022.