求職者にとって、今回の研究から得られる教訓は明白だ。弱いつながりは、就職や転職の可能性、昇進、あるいは賃金にさえも実質的な影響を与えうるため、みずからのデジタル上のソーシャルネットワークを積極的に管理し、その範囲を広げ、多様化しなくてはならない。
デジタル業界で働いていたり、テクノロジーが急速に進化する職務に就いていたりする場合、弱いつながりは斬たな種類の情報をもたらし、新しいコミュニティと機会への架け橋となってくれる。リモートワークをしている場合は特に、この点に注目すべきだろう。リモートワークをしていると、オフィスで雑談したり、予期せぬ出会いが生まれたりすることが難しくなるからだ。
また、これらは求職者だけでなく、採用担当マネジャーにも影響を与える。筆者らの分析結果は、トップクラスの多様な人材を見出し、採用しようとする時に、幅広いオープンなネットワークが大きな価値を持つことを浮き彫りにした。
現在、リンクトインをはじめとするデジタルプラットフォーム経由で、大量の求人や採用活動が行われていることは非常に重要だ。このようなプラットフォームの仕組みや「もしかして知り合い?」のようなアルゴリズムの有用性を採用担当マネジャーが理解すれば、質の高い人材にリーチして、採用につなげる可能性を最大化できるはずだ。
いつも内輪の中で同じ面々と接しているのではなく、そこから飛び出して、ネットワークの辺境まで範囲を広げれば、スター社員となる人物を獲得できるだろう。その結果、企業や経済の成長エンジンとなるイノベーションを牽引することにつながるかもしれない。
筆者らの研究は、求職者や採用担当マネジャーに恩恵をもたらすだけでなく、アルゴリズムを積極的に管理することの重要性も示唆している。今日では、組織やデジタル経済の多くの部分が、AIの影響を受けており、ある程度、AIによって「統治されている」といえる。これらのアルゴリズムには、経済的なアクセスを促進し、効率を高め、さらには企業の運営モデルを再設計する力がある。
だからこそ、AIは経営陣が慎重に管理する必要があり、これらのアルゴリズムを無数の人々に適用することによって、どのような影響が生じるかを長期的に分析する必要がある。たとえば、リンクトインでは社内ツールを構築して、プラットフォームの新機能による意図せぬ影響を追跡し、対処している。
今回の研究結果が示しているように、リンクトインのようなソーシャルプラットフォームは、効果的に利用されれば、人々を適切な相手と結びつけるアルゴリズムによって、雇用主と従業員双方の経済的価値を高めることができる。
したがって、求職者であれ、マネジャーであれ、採用担当者であれ、慎重かつオープンにオンライン上のネットワークを拡大し、「もしかして知り合い?」のアルゴリズムが推奨するつながりを無視する前に、よく考えてみてほしい。2次のつながり、すなわち知り合いの知り合いは、チャンスに満ちた大きな世界への入り口なのだ。
"Which Connections Really Help You Find a Job?" HBR.org, December 01, 2022.