1. フォロワー数
当然ながら、インフルエンサーのフォロワー数が多ければ多いほど、起用効果が大きくなることがわかった。フォロワー数が多いインフルエンサーはリーチが広いだけでなく、人気があり信頼性も高いと見なされるため、同じ予算を使って人気のないインフルエンサーを起用するよりも、高いエンゲージメント率を生み出せる。
筆者らの分析結果では、フォロワー数が平均より1標準偏差大きいインフルエンサーの投稿は、ROIが9.2%高かった。
2. 投稿頻度
インフルエンサーの投稿頻度については、「ゴルディロックス効果」が確認された。これは、3段階の選択肢が示された場合、真ん中の選択肢を無意識に選んでしまうという心理効果だ。つまり、投稿頻度が低いインフルエンサーは、最新の情報源とは見なされない。また、フォロワーのフィード上での存在感が薄いため、親近感や信頼性を醸成することができない。
一方で、投稿があまりにも頻繁だと、閲覧のじゃまになり、フォロワーを疲れさせてしまう。フォロワーはインフルエンサーの投稿に興味を持たなくなったり、条件をつけてフィルタリングしたり、あるいは迷惑に感じるようになったりすることさえある。そのため、中程度の投稿活動、ここでは週に5回程度の投稿をするインフルエンサーを起用していたブランドのROIが最も高かった。
また、筆者らの分析では、多くのマーケティング担当者がこの効果の重要性に気づいていない可能性が示唆されている。今回の調査対象となった企業の多くは、投稿頻度が低すぎるインフルエンサーを起用していた。そのため、仮に投稿頻度が最適なインフルエンサーを選んでいれば、それだけでインフルエンサーマーケティングのROIを平均で53.8%増加させることができたはずだった。
3. フォロワーとブランドの適合度
フォロワーとブランドの一致度、つまりインフルエンサーのフォロワーの興味とブランドの事業領域の適合度についても、同様のゴルディロックス効果が見られた。
たとえば、スキンケアブランドが美容に興味のあるフォロワーを持つインフルエンサーを起用した場合、フォロワーとブランドの適合度は高いが、自動車に興味のあるフォロワーを持つ人を起用した場合の適合度は低い。インフルエンサーのフォロワーがスポンサーブランドに関する話題に高い関心を持っている場合、インフルエンサーの投稿はフォロワーの関心と一致する傾向があり、その結果、投稿が自分に関係があると感じられる可能性が高まる。
一方で、それは同時に、投稿が類似する多くのコンテンツとフォロワーの注意を奪い合うことを意味し、結果として、フォロワーがその話題への興味を失う可能性もある。そのため、フォロワーとブランドがある程度(ただし、そこまで完全にというわけではなく)一致しているインフルエンサーを起用することが、最良の結果につながっていることがわかった。
筆者らの分析では、フォロワーとブランドの最適な適合度は、インフルエンサーのフォロワーの約9%がスポンサーブランドと一致する興味を持つ時であり、この最適時から1標準偏差離れると、ROIは7.9%減少する。
この点に関しては興味深いことに、筆者らが調査したブランドのほとんどが、すでに最適に近いパートナーを起用していた。これはつまり、マーケティング担当者がある程度、ブランドとの適合度が中程度のフォロワーを狙う利点について直感的に理解していることが考えられる。