6. 投稿にブランドへのリンクを貼るかどうか
コンテンツマーケティングに関する先行研究と同じように、ブランドアカウントやブランドサイトへのリンクが含まれる投稿は、パフォーマンスが著しく高かった。これは、リンク先で投稿内容に関する重要な追加情報が得られるため、エンゲージメントが向上する可能性が高まるからだ。
筆者らの調査では、ブランドアカウントやブランドサイトへのリンクが貼られた投稿は、そうでない投稿に比べて、ROIが11.4%高かった。
7. 新商品をアナウンスする投稿かどうか
新商品発売時のプロモーションではインフルエンサーの力を借りたくなるものだが、筆者らの分析からは、逆効果になる可能性が示唆されている。インフルエンサーが新商品の発売を伝える投稿のROIは、そうではない投稿に比べて、30.5%低かったのだ。
たとえば、ダイソンのインフルエンサーによる新製品発売に関する以下の投稿は、パフォーマンスがいま一つだった。
一方、スキンケアブランドのキールズのインフルエンサーが書いた次の投稿は、新商品の発売についてではなく、実際にかかったコストもダイソンの投稿の10分の1以下だったが、エンゲージメントは相対的に高かった。
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当然ながら、本稿で紹介した内容は、筆者らの調査対象自体の傾向に基づくものであり、企業によって結果は異なるかもしれない。
また、筆者らは主として、リポストもしくはシェアの頻度をROIの指標として用いた。その理由は、単に投稿に「いいね!」を付けるといった、オンラインにおける受動的な反応に比べて、エンゲージメントが高いことを示しているからである。とはいえ、リポストやシェアだけが、キャンペーンの成功を評価する指標ではない。
特に、短期的なROIは短期的な判断の指針となるが、企業としては、特定のインフルエンサーを起用することによる長期的な影響も念頭に置かなくてはならない。その影響がポジティブなものであれ、ネガティブなものであれ、実際に具体化するまでには時間がかかるかもしれないが、ブランドアイデンティティに大きな影響を与える可能性がある。
とはいえ、短期的なエンゲージメントを最適化することに関しては、筆者らの分析から戦術面でいくつかの助言が導き出せた。つまり、インフルエンサーの選定にあたっては、フォロワー数が多く、投稿頻度が高く(だが、そこまで高すぎず)、オリジナルコンテンツを多く投稿し、フォロワーの関心がブランドの事業領域とある程度(ただし、そこまで完全にというわけではなく)重なっている相手を見つけ出すことである。そして、投稿は中程度に肯定的なトーンで、可能であればリンクを貼り、新商品の発売に焦点を当てないようにする。
過去の個別事例ではなく、今回のように研究によって裏付けられた指針を念頭に置けば、企業はマーケティング費用を最大の利益が期待できる人物やコンテンツに、確実に向けられるようになるだろう。
"Does Influencer Marketing Really Pay Off?" HBR.org, November 24, 2022.