みずからのキャリア開発をないがしろにしていないか
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サマリー:時間不足や、周囲の人や状況のせいにして、みずからのキャリア開発をないがしろにしていないだろうか。本稿では、キャリアアップを実現するためにみずからを磨くことがいかに大切なことであるかを論じる。そして時間... もっと見る、人、環境、学びの対象が不明確といった、キャリア開発の妨げになっている課題をいかに乗り越えるべきか、その方法も提示する。 閉じる

変化の時代にキャリア開発に取り組まないことはリスクである

 いまや変化と不確実性を抜きに、キャリアを考えることはできない時代だ。それに伴い、人々は仕事に何を求めるかを再検討しはじめている。

 多くの人のキャリアは、真っ直ぐなはしごを順々に上っていく旧来型のものではなく「ねじれたキャリア」に移行した。キャリアのあり方は、直線的に昇進していく以外に、さまざまな方向に進む可能性があるものに変わったのである。常に変化している時代には、個人のキャリア開発の取り組みは、「あればよい」ものではなく、「なくてはならない」ものと考えるべきだろう。

 しかし、実際には、キャリア開発に重きが置かれているケースは非常に少ない。日々の業務に追われるあまり、自己改善がないがしろになっている人が多いのだ。ほとんどの場合、目の前に山積する課題への対処に比べると、自分の未来に投資することは緊急性が乏しいように感じられる。

 このような姿勢は、長い目で見るとリスク要因になる。仕事へのエンゲージメントと、働くことの喜びが損なわれかねないのだ。キャリア開発を後回しにすれば、キャリアが停滞するのはもちろん、スキルも磨けなくなるおそれがあるからだ。加えて、短期的にもリスクはある。自分の能力を高めるための取り組みに時間を割かなければ、レイオフや職場の組織改編など、みずからの雇用に悪影響を及ぼす外的ショックにさらされた際の、キャリアのレジリエンスを弱めてしまう。

 本稿の2人の筆者が設立したアメイジング・イフでは、毎年10万人を超す人たちを対象に、キャリア開発のための研修を実施している。その経験から、人々の成長を妨げる障害として一般的なものが4つあることがわかっている。それは「時間の障害」「人間の障害」「対象の障害」「場所の障害」である。本稿では、クリエイティブな方法により、それらの障害を乗り越え、自分のキャリア開発に投資し続ける方法を紹介したい。

キャリア開発を妨げる4つの一般的な障害

 あなたにとって身に覚えがあるのは、4つのうちのどの障害だろうか。同時に2つ、もしくは3つ、あるいは4つすべての障害に直面している人も少なくない。

時間の障害

内容:「時間ができたら、キャリア開発に本腰を入れよう」

リスク:キャリア開発と日々の仕事を切り離して考えてしまう。

人間の障害

内容:「スキル開発を助けてくれる人がいない」

リスク:進歩できるかどうかが他人次第になってしまう。

対象の障害

内容:「どのようなスキルを開発したいのかわからない」

リスク:唯一の「正解」を追い求める結果、行動を起こせなくなってしまう。

場所の障害

内容:「職場にキャリア開発の機会がない」

リスク:いら立ちが募り、モチベーションを失ってしまう。