景気停滞期に売上げを伸ばす方法
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サマリー:景気が停滞する時期こそ、ライバルに差をつける機会である。本稿は、経済が停滞する時期に売上げを伸ばすには、実際にどのようなことに着手するべきかを論じる。短期間で効果を上げる戦術として、営業とマーケティン... もっと見るグ領域における取り組みを3つ提示する。 閉じる

厳しい時期に売上げを伸ばす企業は、3つの領域で機会を見出す

 需要の縮小、金利の上昇、激しい変化と不確実性の拡大……厳しいビジネス環境が続く中で、企業はコスト削減を余儀なくされている。

 筆者らが所属するコンサルティング会社アリックスパートナーズが世界3000人の企業幹部を対象におこなった調査によると、20%の企業幹部は自社ですでにレイオフを実施しており、20%は今後のレイオフを予定していて、25%は新規採用を停止している。加えて、33%は現金保有を増やしはじめていて、36%は支出削減のためのプログラムに着手している。これらは、よく実践されている措置であり、たいていは必要な戦略でもある。

 しかし、コスト削減にいそしむだけで繁栄を築くことはできない。筆者らの経験によると、景気後退への対処法は、コストを削減するだけでは不十分だ。見落とされがちだが、景気後退期にあっても、いくつかの戦術的な取り組みを実行することにより、素早く、そして大幅に売上げを伸ばす道はある。

 ここで言う戦術的な取り組みは、新しい市場を見出したり、市場で新しいポジションを確立したりといった戦略的な取り組みとは性格が異なるものだ。また、長期の戦略を追求することに取って代わるものでもない。その狙いは、すでに行なっている活動の絞り込みを徹底し、有効性を高めることにある。

 戦術的と言っても、些末なものという意味ではない。筆者らが実際に目の当たりにしてきたように、厳しい時期に営業とマーケティングの効率を高めた企業は、わずか1~2四半期で何千万ドル、ことによると何億ドルも売上げを伸ばした。また、景気が回復した時には、これまで以上に強くなっている企業もある。

 では、具体的にはどのような行動を取ればよいのか。成功している企業は、すぐに大きな成果を上げられる機会を3つの領域で見出している。以下では、その3つの領域について見ていこう。

営業とマーケティングの効率を高める

 ビジネスの成長が停滞していても、営業部門とマーケティング部門はコスト削減の対象にならずに済む場合が多い。収益を生み出す活動の足を引っ張るわけにはいかない、という発想があるためだ。

 リーダー層がコスト削減に関する難しい決断を下そうとすると、すぐに「営業部門には手を付けないで欲しい」といった反応が持ち上がることが多い。その結果として、営業部門は、古い組織構造に縛られたままになったり、会社の新しい方針に沿って行動できなかったりするおそれがある。営業部門のリーダーは、コストを削減する以外にも以下のような方法により営業活動を改善できる。

市場に関する情報の収集と分析、市場のセグメント分け、営業チームの構成を最適化する

 ほとんどの企業では、市場環境や市場セグメントの変化に適合するように、営業チームの構成を改善する必要があり、また、得意先との関係のマネジメント方法も改善すべきだ。

 たとえば、あるグローバルな有力メディア企業は、営業部門の大規模な組織変更を行い、それぞれの市場で最も規模が大きくて、最も大きな利益をもたらせる顧客セグメントにリソースを集中した。また、ある医療機器メーカーは、営業チームの構成を変更し、地域ベースの編成から販売チャネルベースの編成に転換した(分析を行なった結果、そのように変更したほうが効率的だと判断できたためだ)。このような変革には、営業組織に活力とやる気を注入し、より効率的に成長を追求できるようにする効果が期待できる。