営業プロセスを可視化する

 多くの企業で営業プロセスの評価や再検討は、事後に実行されている。この場合、すでに起きたことをテーマにするため、どうしても市場環境に対して受け身で反応する形になる。筆者らは、クライアント企業に対し人工知能(AI)をベースにしたツールの導入を通じて、営業部門の従業員の生産性とエンゲージメントのレベル、流出する危険がある得意先についての情報、その他先回りして対処できる問題の所在を全面的に可視化しようとしている。

 たとえば、ある通信企業は筆者らの支援の下、営業プロセスの検討にAIを取り入れたことで、検討の際に適切な問いを用意できるようになった。その結果、同社は、3四半期内に法人顧客向けの売上げを5000万ドル以上増やすことができた。

マーケティング活動の投資利益率を向上させる

 ビジネス環境の激しい混乱と不確実性に直面している時期は、マーケティングに関わる支出を再検討し、最も有効な成長の道筋に投資を行う最善のタイミングだ。

マーケティングキャンペーンへの支出を最適化する

 マーケティングキャンペーンへの支出を再検討し、時代遅れになっている慣行を打ち切り、適切な分野に資金を再配分することは、健全な姿勢と言える。既存のマーケティングキャンペーンへの投資とその成果との間に、どの程度強い関連を見出せるか。いま優先的に取り組むべきなのはどの分野か。たとえば、ビジネス環境が変わっていることを前提に考えた場合、ブランド認知度の向上と、新商品の市場投入、標的を絞り込んだキャンペーンの実行といった要素のなかで、どれを重んじるべきなのか。

 筆者らが見てきた例では、マーケティングキャンペーンをゼロから考え直して、4週間にも満たない期間でボトムアップ方式により新しい戦略を立案し、15~20%のコスト改善を成し遂げる企業もある。

マーケティング段階の見込み客(MQL)を営業段階の見込み客(SQL)に移行させる

 見込み客のマネジメントを最適化することにも、同様の効果が期待できる。あるデジタルサービス企業では、見込み客の成約率が40%未満に留まっていた。その原因は、見込み客のマネジメントに関して一貫性のあるプロセスを設けていなかったことにあった。

 この会社に筆者らが協力し、AIを活用した見込み客評価の仕組みを採用した。さらに営業活動の状況を透明化し、フォローアップを行う責任を明確化した。すると、成約率は2四半期の間に87%まで上昇し、売上げは2000万ドル増加した。

カスタマーサクセスを強化し、既存の顧客ベースを維持し、顧客ロイヤルティを改善する

 不確実なビジネス環境において、既存顧客からの売上げを最適化することは、顧客ロイヤルティを強固なものにするのと同時に、売上げを短期間で増加させるための優れた方法だ。以下では、この点で素早く有意義な結果を生み出すための方法を3つ紹介する。

顧客のつなぎ留めに力を注ぎ、顧客の入れ替わりを減らすことで売上げ継続率(NRR)を高める

 顧客のつなぎ留めに主眼を置いた活動としては、カスタマーサクセスを強化するための取り組みを、計画的に実行することが有効だろう。そのような活動は、目標がはっきりしていて、定量的なデータを重視し、適切なインセンティブ設計とトレーニングの仕組み、そしてコミュニケーションプランを伴っていなくてはならない。加えて、それぞれの部署のリーダーに、重要な活動についての責任を持たせることも必要だ。

 このような条件を満たした活動を行うことにより、既存顧客の維持率が90%を上回り、1年以内に既存顧客の契約更新による売上げが1億ドル増収した例もある。