職場での自分の影響力を過小評価していないか
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サマリー:人はみずからの影響力を過小評価しがちだ。本稿は自身が持つ影響力を正しく把握し、活用するための手法を提案する。自分の潜在的な影響力を知る最も迅速かつ効果的な方法は、それを試すことだと筆者は論じる。そうす... もっと見るることで、あなたにはこれまで考えていた以上の影響力があることに、すぐに気づくことができるだろう。 閉じる

人はみずからを過小評価する傾向にある

 多くの人がそうであるように、あなたは他者に対する自分の影響力を常に過小評価している。ある研究で、他者が自分に対してどれだけ注意を払い、自分のことを考え、自分のための行動に同意してくれるかを参加者に尋ねた。そこで確認した本人による主観的な推定値と、他者が「実際に」どれくらいその本人に注意を払いその人のことを考えその人のために行動するかという客観的指標を比較した。すると、人々の主観は、他者による客観的な指標に比べて過小評価する傾向があることがわかった。

 権力のある人でも自分の影響力を過小評価している。部下が異議を申し立てたり、部下の提案を受け流したりすることを、部下が実際に感じている以上に部下に快く思われていないと勘違いしている。

 自分の影響力を見誤ると重大な結果をもたらす。変革の先頭に立ったり、自分にふさわしいことを要求したり、自分が関心を寄せる活動を支援したりする機会を逃すことになる。行き当たりばったりの言動は、自分が意図しない形で他人に影響を与えることもある。

 このように自信喪失の傾向は、影響力を得るための方法を無駄に(そして果てしなく)探し続けることにもなる。しかし、本当に必要なのは、自分がすでに持っていながら効果的に行使できていない可能性のある影響力をよりよく認識することだ。

 以下は、筆者の近著で紹介した3つの提案だ。これは影響力を得るためのものではなく、すでに持っていながら見逃しがちな影響力に意識を向けることで、それをより賢く利用するためのものだ。

他者への影響力に目を向ける

 他者に対する自分の影響力を認識できない理由の一つは、単にそれが見えていないからだ。私たちが世界を見る時は、自分の2つの目を通して見る。つまり、他者が自分に及ぼす影響や、他者同士が及ぼす影響を見ている。しかし、世界に対する視点に欠けている重要なものは、自分自身だ。自分が力関係の一端を担っていることを見逃しているのだ。

 自分の言動が他者に与える影響を理解するためには、自分の頭の中から抜け出す練習をすることだ。そうすれば、他者に影響を与えている可能性のある自分の言動を見落とさなくなる。限定的な視点に囚われなくなるのだ。

 そのための有効な方法の一つは、最近職場であった重大なやり取りや会議を、10分間かけて中立的な第三者の視点に立って思い浮かべることだ。チームの直近の試合映像を見返すコーチになったつもりで考えるとよい。実際にはその試合は、同僚との緊迫した会議だ。このやり取りを外から見ていた人は、その時の力関係をどう解釈するだろうか。相手に影響を与えていた可能性のある、あなたの言動はどのようなものだろう。

 数カ月に一度、10分ほどの時間を取って、第三者の視点で最近のやり取りを振り返ることは、カップル関係の満足度の維持につながることが研究で示されている。おそらくそれぞれの当事者が、対立を繰り返していることに対する自分の責任に気づくからだろう。