8. AIへの懸念は、採用テクノロジーの透明性を高める
採用活動でAIを活用する組織が増えるにつれ、こうした取り組みの倫理的な意味合いを急ぎ検討する必要性が生じている。2023年は、この問題がいちだんと顕在化するだろう。各国政府が採用活動におけるAIの使用を精査し始めれば、なおさらだ。
たとえば、2023年1月1日に施行されたニューヨーク市の条例は、雇用主によるAI採用ツールの使用を制限するとともに、組織が毎年バイアス監査を受けること、ならびに採用基準の開示を義務付けている。
採用プロセスにAIや機械学習を利用している組織や、こうしたサービスを提供するソフトウェアベンダーは、新たな規制を遵守する圧力に直面するだろう。たとえば、AIの使い方について透明性を高めることや、監査データを公開すること、さらには従業員と採用候補者にAI主導のプロセスから退出する選択肢を与えることが含まれる。
9. ソーシャルスキルの崩壊に対処しなければならない
多くの新入社員は苦しんでいる。Z世代の従業員の51%が、それまでの教育は社会人として直面する問題へ対処するのに役に立たないと答えている。コロナ禍により、彼らは職場の規範を観察したり、自分の組織で何が適切かまたは有効かを判断したりする機会がほとんどなかった。
筆者らの分析によると、このように感じているのはZ世代だけではない。2020年以降、すべての従業員のソーシャルスキルが低下していることがわかった。バーンアウトや極度の疲労、キャリアの不安はパフォーマンスを低下させる。世代を問わず、誰もが新しい職場環境を生き抜くためのルールを解読できていない。Z世代だけに焦点を当てても、この問題に適切に対処できない。組織は、従業員全体に対してプロ意識を再定義する必要がある。
リーダーは、従業員がつながりをつくるために出社勤務に戻るよう強制するのではなく、地理的および世代的な境界を超えて意図的につながりを構築する必要がある。ガートナーの調査によると、従業員同士の意図的な交流を成功させるには、雇用主が従業員の選択と自律性、明確な仕組みとパーパス、そして軽快で楽しい感覚という3つの要素に注力すべきだ。
たとえば、ある企業はアンケートを取って、従業員が同僚とどう関わりたいか(ハッピーアワーを好む社員もいれば、昼食兼学習を好む従業員もいる)をマネジャーが把握できるようにした。どのテレビ会議は顔出しで参加する必要があり、どのミーティングはその必要がないといった、明確な規範や組織の価値観を中心に相互作用を構築すると、混乱や疑念が取り除かれて、従業員はより自由に参加しやすくなる。
別の企業では、交流やコミュニケーションの規範をチームで決めさせることにより、従業員が自分らしい方法で関わり合いを持ち、安全だと感じられるようにした。
ガートナーが2022年に約3500人の従業員を対象に行った調査によると、従業員が意図的につながりを構築するのを組織が支援すると、その従業員が成績優秀グループに所属する確率が5倍、同僚とのつながりを感じる可能性は12倍になることがわかった。
* * *
今日の環境では、仕事の最も重要な側面にうまく対処した組織(最重要人材を獲得・維持し、全従業員を総合的にサポートし、従業員の個人情報を倫理的に収集・利用するなど)は、最高の雇用主としてみずからを差別化できるだろう。
企業は、こうしたトレンドを先取りして、新たな課題に積極的に取り組む強固な「仕事の未来」戦略を策定することにより、未来の成功に近づけることができるだろう。
*本調査には、ベン・クックとオータム・アーチュレタが貢献した。
"9 Trends That Will Shape Work in 2023 and Beyond," HBR.org原文, January 18, 2023.