職場で脆弱な「男らしさ」問題を解決するために
こうした問題を完全に消し去るのは無理な話だが、明るいニュースもある。筆者らの研究によって、職場における脆弱な男らしさが生み出す被害を減らすために従業員とマネジャーが取るべき3つの重要なステップが特定されたのである。
1. 男らしさの脆弱性を認識する
この問題が非常に深刻である理由の一つとして、「男性らしさへの脅威を感じたことが引き金となって、有害な行動に走った」ことが必ずしも明白ではない、という点が挙げられる。したがって、この問題に対処するためには、まず始めに問題が存在することを認め、脆弱な男らしさが職場に好ましくない状況をもたらしているという認識を持つ必要がある。
男性は、自身が男性性への脅威を感じていることに気づいていないケースが多く、有害または非生産的な形で反応したとしても、それが無意識の行動である場合も少なくない。
脅威を感じた時によく見られるこの自動的な反応について男性が理解を深めることで、反応のパターンを認識し、そこから脱却することが可能になる。
加えて、トラブルが生じた際には、マネジャーは「その人物が悪人だから悪行に走った」と決め付けるのではなく、男性性への脅威が原因だった可能性についても考慮すべきだ。もちろん、自身のアイデンティティが脅かされたように感じたからといって、他人を傷つけてよい理由にはならない。それでも、マネジャーが効果的な解決策を導き出すためには、問題の根底に流れる真の原因を理解することが不可欠だ。
また、HR部門のリーダーは、トレーニングの教材やプロセスの開発を通じて、マネジャーと従業員が問題を認識し、自分自身やチーム内で問題に対処できる力をつけられるよう支援すべきだ。
2. 健全な男らしさを受け入れる
同時に忘れてはいけないのは、男らしさ自体は敵ではない、という点だ。男らしさを実感したいと望むことが悪いわけではない。ただし、自身のそうした側面に背中を押されて、職場で有害な行動に走るのは間違っている。
したがって、男性は自律性を取り戻すために他者を傷つけるのではなく、みずからの男性性を受け入れ、発揮できるような前向きで建設的な方法を模索すべきである。たとえば、男性従業員が「女性的」に思える業務に違和感を覚える場合、より自分にフィットした業務内容になるよう、多少のジョブクラフティング(物事の見方を変えたり、業務内容に小さな修正を加えたりすること)を行ってもかまわない(ただし、そうしたステレオタイプをキャリア選択の指針とすることに意味があるか、検証する価値はあるかもしれない)。また、スポーツなど伝統的に「男らしい」とされてきた趣味を追求する道もある。
同時に、男らしさの定義を広げることも、万人に恩恵をもたらす。「本物の男」ではなく、「いい人」を理想像に掲げれば、攻撃性や強さといった特性だけでなく、礼節、公正さ、優しさ、育成や協力といった資質も「男らしさ」の定義に含められる。
男性が圧倒的に多いチームでは特に、男らしさのアピールに気を遣うケースが多くなる。そのため、男性リーダーはよりポジティブな男らしさの見本を見せられるよう意図的に努力する必要がある。一方、HR部門はそうしたリーダーを積極的に登用し、彼らの組織内での存在感を高めるよう尽力し、彼らの健全なアプローチを見習うことを強調すべきだ。