4. 弱さを隠さない行動の模範を示す

 弱みを隠さず、傷つくことを恐れないような行動を許容するためには、最初にCEOみずからがその模範を示す必要がある。特に、何を言うべきか、何を言わないでおくべきかをめぐって人々が損得勘定をしている場合には、この行動によって彼らの不安や疑念を和らげることができる。

 従業員がCEOの振る舞いから許容と尊重の姿勢をどれほど感じ取るかによって、アイデアの衝突の質が変わってくる。CEOがみずからの弱みを見せなければ、生産的な対立の代わりに沈黙が生じることになる。したがって、以下のことを心掛けよう。

・率直に自分自身を疑う。
・助けを求める。
・知らないことを、知らないと認める。
・過去の過ちを指摘する。
・自分の不安を表明する。

5. 主張する前に、問いを投げかける

 議論の場では、水平思考、発散的思考、非線形思考が求められる。CEOが質問をしたのちに自分の見解の主張へと移るのが早すぎると、チームを緩やかに抑圧し、議論の終了をほのめかすことになる。

 問いには、説明的問いと探求的問いの2種類がある。説明的問いは、データを用いた因果関係に基づき、現在のパフォーマンスについて理解するために行う。探求的問いは、何が可能かについて、データを用いて仮説や予測を立てるために行う。説明的問いは業務遂行力の向上に役立ち、探求的問いはイノベーションを促進する。

 焦点にするものが業務遂行力であれ、イノベーションであれ、心からの好奇心を持って、思慮深い質問をしよう。そうすることで、平等化が促進され力の差が縮まる。次のような言葉を投げかけてみよう。

・~について、じっくり考えるのを手伝ってくれませんか。
・~について知りたいです。
・~に魅力を感じます。
・なぜ~なのか、不思議です。
・~の方法が見つかるのを、楽しみにしています。
・一緒にこの問題に取り組みましょう。

6. 現状に異を唱える行動に、見返りを与える

 筆者が協働したCEOの一人は、議論の場で問題を提起し、自分の見解に反論するよう皆に求めることを好んだ。「私がどう間違っている可能性があるのか、教えてください。私の盲点を見つけるのを手伝ってください」と言うのだ。そこで話を止め、勇気を出して反論する最初の一人が現われるまで、皆を黙ったままにさせる。

 そして最初の一人に対し、「ありがとう。私は何かを見落としていたのかもしれません。あなたの見解を掘り下げてみましょう」と言葉を贈ることで、その行動にすぐさま報いる。反対意見を抑え込むと、誤った判断を招くリスクが高まることを強く認識している彼女は、現状に異を唱える行動が常態化するまで頻繁にこれを実践していた。

7. ユーモアと情熱を持って抵抗する

 議論の場における生産的な対立を増やすために、筆者が協働した別のCEOはユーモアと情熱を巧みに使っている。たとえば、「その点について、あなたと腕相撲をしてもいいですか」という言い方で、常に笑いと前向きな反応を引き出す。ユーモアと情熱は場を和ませるだけでなく、プロセスにワクワク感をもたらし、綿密な議論への意欲を示すことにもなる。

 また、このアプローチによって、大きな利害が絡む議論の場で感情が和らぐ。CEOが独裁的にならずに反論できれば、議論が開放的になり、他者も同じように振る舞うことができる。

8. 強い個性の持ち主による影響を緩和する

 おそらく議論の場には、内向的な人、外交的な人、そして強い個性の持ち主もいることだろう。内向的な人は言葉以外の方法で静かに議論を進めることを好むかもしれず、外交的な人は言葉を発してオープンに進めることを好むかもしれないと心に留めておこう。

 強い個性の持ち主、特に自己認識に欠ける人に対しては、牽制しよう。優越的な主張や過度に独断的な態度は、許容してはならない。

 あるCEOは、次のような言い方でこれを実践している。「この問題を話し合うに当たり、各自に公平に割り当てられた持ち時間を超えないようにしてください。皆さん一人ひとりに平等に参加してほしいのです」

 これには留意点がある。不安を感じている人は、他者を従わせることで自分を引き上げる傾向があるということだ。CEOの仕事は、恥ずかしさや、きまり悪さを誰も感じることのない環境をつくることだ。権力の舞台が上がるにつれて、場がこじれた時に生じうる恥の感覚はより根深いものになる。なお、静かな人からは発言を誘い出そう。直接質問をして、熟考する時間を与えるとよい。