フレーミングとは何か、なぜ使うリーダーが少ないのか
フレーミングとは、問題を定義し、話し合うための枠組み、つまり「器」をつくることだ。フレーミングによって枠組みを設定することで、それに沿って自分の思考や感情、経験を整理できるようになり、最終的には、その問題に対して行動を起こせるようになる。
筆者らは、フレーミングとはリーダーシップにとってマルチツールナイフのようなものだと考えている。つまり、リーダーが使うことができる最も便利なスキルの一つであり、「言及されない問題」を含むさまざまな問題を解決するものである。
それほど価値のあるツールであるにもかかわらず、「フレーミングを知らない」あるいは「フレーミングを使っていない」リーダーが多いのはなぜか。その理由は3つあると、筆者らは考えている。
リーダーにフレーミングのスキルを教えていない
フレーミングは歴史を通じて、聴衆を説得し、変革を起こし、危機に瀕した人々を結集させ、説得力のあるビジョンを打ち立てるために用いられてきたコミュニケーションスキルだ。しかし、リーダーにはそのような能力が期待されているのにもかかわらず、その方法を教えられていない。
筆者らのクライアントであるエグゼクティブ、とりわけ財務、オペレーション、IT、HRなどの専門的な機能部門を率いるリーダーは総じて、フレーミングという言葉すら聞いたことがないのが現実である。
認められないことはフレーミングできない
「言及されない問題」とは、まさに回避するように習慣づけられてきたことである。私たちは幼少時代から「言われて嬉しいことでなければ、言わないほうがよい」と教えられてきた。
そのように、人間関係の中で互いを不快にさせない習慣を身につけることで、自分自身と他者を守るように訓練されてきたともいえる。誰も触れたがらない問題や誰も口に出そうとしない問題をフレーミングするということは、この習慣に逆らうことなのだ。
「フレーミングは余計な時間がかかる」と思い込んでいる
リーダーは、結果を出すように動機づけられている。誰も触れたがらない問題をフレーミングすると、本題から逸れて余計な時間がかかり、進展を遅らせると見なされているのだ。
しかし、物事の進展にとって最大の障害となるのは、言語化されない差異や妨害行為、エネルギーを奪う雰囲気のように、対処されずに放置されているものにほかならない。