【シナリオ1】
パフォーマンスが改善されないチーム
筆者らのクライアントで、プロフェッショナルサービスファームの最高販売責任者(CSO)を務めるアマル(仮名、以下同)は、不満と懸念を抱いて筆者らのところにやってきた。
アマルは、それまでの3カ月間で、新しい地域担当セールスディレクターであるリーに、セールスチームの動きを具体的かつ明確に改善するよう、3度にわたってフィードバックしていた。たとえば、現場の営業担当者は、見込み客の選別と追跡という会社の営業プロセスにきちんと従っておらず、その結果、営業パイプラインが貧弱になり、会社の成長目標を達成できそうになかった。
リーは、共感力と協調性に富むリーダーシップスタイルに定評があったが、具体的で明確な目標を設定する必要性を軽視しているように見えた。アマルはリーに対して、部下により明確な目標を与えるように勧め、説得し、定期的に進捗を確認したが、何も変わらなかった。
そこでアマルはリーのために、この問題を是正するための最終手段として、この問題をフレーミングすることにした。
ステップ1:停滞の原因を自分の中で見極める
この件について3回もフィードバックを与えたにもかかわらず、リーは自分のチームに対して、確固たる明確な目標を伝えていない。
ステップ2:好奇心を持って状況を見つめる
もしかしたら、リーはフィードバックの内容に納得していないのかもしれない。もしかしたら、そのポジションに向いていないのかもしれない。もしかしたら、明確な期待や測定可能な目標を設定する方法を知らないのかもしれない。もしかしたら、部下との衝突や反発を恐れているのかもしれない。
ステップ3:気づいたことを判断せずに伝える
アマルはリーに対して、次のように言う。「あなたとは営業担当者に明確な目標を与えるべきだと話し合ってきましたが、チームメンバーは依然として、会社の営業プロセスに従っておらず、問題は解決していないようです」
なお、アマルは再度フィードバックをしようとはしなかった。彼女は「変化が認められないこと」自体を問題として、フレーミングを行ったのである。
ステップ4:学ぶ意思を示す
アマルはリーに「あなたがこの状況をどう見ているのか、なぜこの問題が続いているのか理解したいと思っています」と告げる。
ステップ5:相手に内省や意見を求める
アマルが、リーに尋ねる。「あなたの考えを聞かせてくれませんか」
このフレームを設定することで、リーがなぜ状況を改善しようとしないのか、その根本理由にアマルは気づくことができた。リーは、自分がスタッフから反発されると思ったこと、対立が苦手なことを認めた。そして、フィードバックの内容は理解しており、改善したいとは思っていたが、権威を振りかざしていると思われることを恐れ、チームメンバーから反対された場合の対処法がわからなかったという。
そこでリーは、リーダーシップ研修に参加し、コーチングを受けることで、自信をつけて、対立を避けるスキルを身につけることができた。そうすることで、チームにより明確な目標を設定し、将来の反発を乗り切ることができた。