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奥深くに潜む問題をどう表面化させるか
チームメンバー2人が敵意をむき出しにして対立していても、誰もそのことについて触れようとしない。ある同僚がプロジェクトのローンチを遅らせまいと、データを改ざんする。リーダーが月曜日のチームミーティングで、前の週に2人のチームメンバーが解雇されたことに言及しようとしない。
このような状況は多くの組織で起きることだが、問題があっても誰も口を出せず、議論もされないため、対処されにくい。
1980年に組織理論の大家であるクリス・アージリスが、そのように「言及されない問題」を指して「undiscussable」(編注:もともとは「議論不可能である、議論の余地がない」といった意味合い)という言葉を生み出して以来、数多くの研究者が「表面化すればあまりにも不快で大きな脅威となるような、奥深くに潜む問題」に取り組んできた。
具体的には、賃金格差、チームメンバーの業績不振、プロジェクトの遂行を危うくする部署間の競争のように、言い出しづらいが、そのまま見て見ぬふりをすれば大問題に発展しかねない話題である。
筆者らは日々、エグゼクティブコーチ、そして組織リーダーシップコンサルタントとして、クライアントとともに「言及されない問題」に取り組んでいる。しかし、クライアントから相談されるのは通常、議論されずにいる問題そのものではない。彼らが訴えるのは、その最も一般的な症状である「手詰まり感」だ。
手詰まりの状態に陥ると、どれだけ会議を開いても単なる現状報告の場となり、無意味に終わる。最悪の場合には、判断の狂いやプロジェクトの失敗につながる。これには大きな代償が伴い、企業は年間数百万ドルの損失を被っているのが現状だ。
都合の悪い問題から目を逸らして何も手を講じなければ、結局のところ、有害な従業員や業績不振の従業員がいても、我慢せざるをえなくなる。同じ議論が繰り返されたり、背後に緊張状態があったりすれば、エネルギーの消耗や対人関係の疲弊につながる。また、問題があっても誰も言及しない状況が続いて、物事が進展しなければ、士気やモチベーションの低下にもつながる。
にもかかわらず、「誰も触れたがらない問題」が蔓延したまま、
それには2つの理由があると、筆者らは考えている。一つは、アージリスが指摘するように、短期的な対立や脅威、気まずさを回避したいという目的にかなっていること。もう一つは、筆者らが主張するように、スキルギャップが存在するためだ。その足りないスキルとは「フレーミング」の技術である。