「デジタルノマド」という働き方を実現する5つのステップ
Henrik Sorensen/Getty Images
サマリー:「デジタルノマド」にはさまざまな形があり、どのようなキャリアやライフステージの人でも好きな場所で仕事をすることができる。一時的でも、一生涯でも、独身でも家族がいても、正社員でも契約社員でも行える、意外... もっと見ると身近なものなのだ。本稿では、リモートワークを「真にリモートで」と一度でも思ったことのある人のために、デジタルノマドになるためのビギナーズガイドを紹介したい。 閉じる

「デジタルノマド」で
世界中を旅しながら働く

 2007年、筆者は、オーストラリアでフリーランスのテレコミュニケーション・プロジェクトを終えたところだった。次のクライアントは欧州にいたが、仕事を終えてすぐ飛行機に乗って帰国する代わりに、東南アジアからリモートでそのプロジェクトに取り組むことにした。これが筆者が最初に経験した「デジタルノマディズム」だったが、最後にはならなかった。いまもデジタルノマドというライフスタイルを続け、世界中で仕事をしながら、家族とともに生活を送っている。

 とはいうものの、デジタルノマドとはいったい、どのような人をいうのだろうか。それは聞く相手による、というべきだろう。筆者や筆者の家族にとっては、「スペインを基点に、2~3週間のワーケーションや、最長3カ月の仕事兼旅行を頻繁に行い、過去15年間で60カ国以上で働き、生活してきたこと」を意味する。また、無拠点ということでもある。住宅ローンなど特定の場所に縛られるものがないため、必要であれば、いつでもいまの拠点を離れることができる。

 他のノマドの中には、さらに長い期間、または短い期間で旅を続ける人もいる。一人で旅する人もいれば、パートナーや友人と、あるいはペットと一緒に旅をする人もいる。バンライフを楽しむ人、サーフィンなど自分の好きなことや、常夏を追い求める人、子どものために旅をベースにした教育プログラムを立てる人など、さまざまだ。

 これまで、数え切れないほどの、ありとあらゆるタイプのデジタルノマドに出会ってきた。そして、デジタルノマドにはさまざまな形があり、どのようなキャリアやライフステージの人でも可能であることがわかり、「好きな場所で仕事をする」生き方の熱烈な提唱者になるに至った。そうした経験をもとに、デジタルノマドに関するリンクトイン・ラーニングのコースや、世界中で活躍するノマドを紹介する「デジタルノマド・ストーリーズ」のシリーズを始めた。

 何より大きい発見は、「ノマディズム」は人を選ばないということだ。一時的でも、一生涯でも、デジタルノマド生活は、年齢を問わず、独身でも家族がいても、正社員でも契約社員でも、意外と身近なものなのだ。そこで、リモートワークを「真にリモートで」と一度でも思ったことのある人のために、本稿ではデジタルノマドになるためのビギナーズガイドを紹介したい。

ステップ1. 自分に合った行き先を選ぶ

 アイスランドかインドネシアか。ポルトガルかパナマか。文字通り、選択肢は世界中に広がっているため、デジタルノマドの冒険を始める前に、どこなら自分のニーズや好みに最もマッチしているか(一つでも複数でも)を判断しなければならない。

法律上、行ってもよい場所

 まず何より、合法的に渡航できる場所でなければならない。以下に、基本的な項目をまとめてみたが、状況はそれぞれ異なるので、自分でも必ず調査すること。またパスポートの制限、ビザ(査証)、健康保険、税金、その他の法的要件については、専門家に相談することをお勧めする。

・パスポート:海外に渡航する場合は、有効なパスポートが必要だ。余裕のあるうちに有効期限を確認し、必要であれば更新する。

・ビザ:渡航先や滞在期間によっては、特別なビザが必要な場合がある。単純に観光ビザで十分な場合もあれば、現在はデジタルノマド用のビザを発行している国もある。就労ビザが必要になる場合もある。

・医療保険:海外旅行者向けの医療保険か、現地の保険への加入を義務づけている国がある。渡航後に困らないように、必要な補償内容を満たしているか確認しておく。

・税金:ほとんどの国の税制は、無拠点労働者を考慮してつくられていない。たとえばEUでは、一年の大半を旅行していても、「納税地」、つまり主たる居所か、住居を所有している場所、または他の大きな資産や利益のある場所を決めなければならない。また、会社員なのか、自営業なのか、契約社員なのかといった職業を明確にすることも、税制上の区分に影響するために必要だ。デジタルノマドは、自分に課せられた義務を果たしているか(雇用主が雇用主としての義務を果たすために必要な情報を提供しているか)を自分の責任で確認しなければならないのだ。