ステップ4. 自分のコミュニティを見つける
デジタルノマドになるための法的な問題や具体的な計画へ対処するのに、大変な思いをすることもあるだろう。しかし、このライフスタイルで最も大きな(そしてあまり語られることのない)課題の一つが、孤独と孤立だ。海外で同じような考えを持つ人を見つけるのは難しい。意識的に何かの団体や活動に参加したり、積極的にイベントに出席したりすることだ。あるいは偶然の出会いを大切にしよう。
「ミートアップ」や「ノマドリスト」などのオンラインプラットフォームや、現地のソーシャルメディアを入り口にしてもよいが、自分からイベントを始めたり、グループをつくったり、親睦会を開いたりすることも臆さずにやってみよう。出会いを求めて新しい趣味やスポーツを始めるのもよいかもしれない。地域のコワーキングスペースやコミュニティ団体が、デジタルノマドをつなぐイベントを開催したり、リソースを提供したりしていないか調べてみよう。
ソロノマドに、多くのメリットがあるのは確かだ。完全に一人になって味わう自立心や冒険心は、ほかではとうてい味わえないものであり、また鋭い問題解決能力やコミュニケーション能力を身につけるのにこれ以上の方法はない。けれども、人とつながり、助け合いや安らぎのネットワークを築くことによって得られるものも、数多くある。
特に、筆者の場合、9年前に娘が生まれてからは、初めて訪れる場所それぞれで積極的にコミュニティを探し、他の家族とつながり、娘が同年代の仲間と交流できるようにすることを大切にしている。もちろん、つながりの意味するところは人それぞれだが、形は違えど誰にとっても必要なものだ。だから、自分が最も大切にしたいコミュニティはどのようなものかを考え、自分にとって有意義と感じられる方法で人とつながる機会を探そう。
ステップ5. 地域社会に還元する
最後に、自分のことだけを考えればよいわけではないことを忘れずに。旅は、その土地の環境に足跡を残す行為だ。旅人には、自分が得た以上のものをお返しする責任がある。カーボンフットプリントを減らす方法や、地元の人々と交流して地域社会を支援する方法を探ろう。
たとえば、デジタルノマドを支援するスタートアップ、アドベンチャリーの創業者兼CEOのミタ・カリマンは、「私がデジタルノマドとして旅をする際には、地元で買い物をし、可能な限りプラスチックの消費を抑え、寄付やボランティア活動を通じて地元の人々に還元するなどの方法で、地球に配慮するようにしています」と話し、持続可能なアプローチを提唱している。
やり方次第で、デジタルノマディズムは、社会に大きく貢献できる。政府や自治体の中には、デジタルノマドが地域経済を押し上げるありがたい存在であることを認識し、リモートワーカーの誘致や定着を目的とした新しいビザやインセンティブなどに取り組んでいる国・地域もある。しかし、地元の人々と積極的に関わる努力なしでは、コリビングスペース(シェアハウスとコワーキングスペースを一体化したもの)やコワーキングスペースは、閉じたものになりかねず、デジタルノマドが地元のコミュニティをいいように利用するおそれがある。
このような問題を引き起こさないためにも、行き先や活動は慎重に選ぼう。すでに観光客であふれ返っているような人気のある場所ではなく、地方も選択肢として検討しよう。人里離れた土地にある多くのコリビングスペースは、未知の文化を体験するにはもってこいであると同時に、本当に必要としているコミュニティに経済的利益をもたらす。
たとえば、筆者はスペインの田舎でひと月、コリビングプログラムに参加した。それは、参加者が地元の村のコミュニティに溶け込み、地域経済を活性化させる目的でつくられたプログラムだった。大げさなことをしなくても、何かを変えることはできる。その国の言葉を話せなくても、人間味あるコミュニケーションは取れる。相手の文化やニーズについてさらに知りたいと思っている意思を示すだけで、驚くほど深いつながりが持てるものだ。
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デジタルノマドの生活は、美化されやすい。スキューバダイビングのレッスンやスパの施術の合い間にズームに参加し、ビーチでマイタイを飲みながら仕事をする。それを夢見ない人はいないだろう。もちろん、現実はさらに複雑で、デジタルノマドのよい点には、それ相応の障害やリスクが伴う。しかし、挑戦する気になれば、真のリモートワークの自由と冒険は、いまやかつてないほど、多くの人にとって身近なものである。だから自分に問いかけてみよう。飛び込む準備はできているか、と。
"How to Become a Digital Nomad," HBR.org, February 08, 2023.