
「希望の給与額」は
よく聞かれるやっかいな質問
就職活動の面接の場には、気まずい空気が漂うものだ。自分がその職務にふさわしい人物だと示す場なのに、どのような展開になるかも、面接官にどう思われているかも見当がつかないのだから。
面接でよく聞かれる質問の一つ──特にやっかいな質問の一つでもある──が、給与に関するものだ。そう、「希望する給与額を教えてください」という質問である。
仮にあなたが希望する給与額を明確に意識していたとしても、多くの人がそうであるように、この問いへの答え方は悩ましいところだろう。初めての就職に向けた面接や、キャリアの初期段階にあって初任者向けの適切な給与水準がわからない場合には、特に判断が難しい。
ファイナンスの専門家で、女性向け資産形成支援サービス「Her First $100K」の創設者であるトーリ・ダンラップも、この質問は極めて答えにくい質問だと語る。以下の動画で彼女が解説しているように、「現在の給与または希望の給与額を尋ねられ、そこで足をすくわれる」のだ。
求職者はこの質問に対して、具体的な数値を示すべきだと考えがちだ。しかし、あまりに低い額を提示すれば、相手が想定している金額を下回ってしまう。かと言って、高すぎれば、採用を見送られるおそれがある。
最初の給与は、のちの昇給やボーナスを決める際の基準となる場合が多いため、適切な水準に設定する必要がある。言い換えれば、初任給がその会社に在籍する全期間の給与に影響するため、できるだけ高い金額を勝ち取っておきたい(ただし無理は禁物である)。
本稿では、このやっかいな質問への答え方について、HBR史上、ベストなアドバイスを提供しよう。次の面接には、準備万端で自信を持って臨めるはずだ。
「希望する給与額を教えてください」に対応する戦略
戦略1. 会話の方向性を変える
給与に関する質問に真正面から答えたくない理由は、たくさんある。過去の給与が低すぎたのではないかと思い、前職や現職の給与を基準にすると不利になると考えているケースもあるだろう。
希望の給与額を尋ねられても、数字で答える必要はない。あなたには自分の利益を守る権利があるのだ。
キャリアストラテジストのジョン・リーズが指摘するように、「あなたはまだ未知の領域におり、効果的に交渉できる状態にはない。給与の話をすべきタイミングは、相手があなたに惚れ込んだ後だ」。惚れ込まれた立場になれば、より大きな影響力を持つことができ、報酬の面で損をすることはないと自信を持てる。さらに、法的な問題も考慮する必要がある。