戦略2. 給与のレンジを提示する

 質問に答えられるだけの情報を持っていると思える場合や、質問を逸らそうとしてもうまくいかず、面接官から返答を迫られた場合には、希望する給与レンジを提示するのも一案だ。

 この場合、面接の前にリサーチして、応募している職務の典型的な給与レンジについて現実的な相場を知っておくと、情報に基づいた返答ができる。

 求人広告に給与レンジを記載するよう雇用主に義務づけている地域もある。その場合は会社側の想定を的確に知ることができ、その範囲内で自分の希望額を提示できる。自身の経験や資格と求人情報を照らし合わせ、自分がレンジ内のどの位置にふさわしいのかを判断しよう。

 また、グラスドアやサラリー・ドットコムのようなサイトを活用して、自分でリサーチすることも可能だ。応募しているポジションの適正な報酬を知ることができ、この額以下は受け入れないという最低ラインを設定できる(注:面接の場で最低ラインの額を伝える必要はないが、交渉の際に頭の片隅に入れておくとよいだろう)。

 ただし、信頼できる情報源を使ったとしても、平均給与の数字から、地域の状況を考慮した額や、特定の職務にふさわしい額を割り出すのは困難かもしれない。たとえば、「データサイエンティスト」と「データマイニングエンジニア」の報酬に大きな差があると考えるのは妥当だろうか。

 あるいは、自身のネットワーク内の人々──自分が働く業界で似たような職務を担っている人や、これから面接を受ける会社で働いている人──に尋ねてみるという方法もある。お金の話題は気まずいものだが、自分の価値を知る助けになるのなら、やってみる価値はある。

 また、社外内のリクルーターとつながっている場合には、給与レンジに関する情報を直接依頼してみるとよい。

 リサーチを通してどのような情報を得たとしても、特定の数字にこだわりすぎないよう注意が必要だ。こだわりすぎると、最終的に決まった給与額に不満を覚えたり、本来得られたかもしれない水準よりも低い金額を受け入れたりしてしまうおそれがある。

 自分で納得できる給与レンジを決めたら、以下のような方法で面接の際に伝えよう。

1. 希望の給与レンジを伝え、その額を望む理由を説明する。リサーチした内容の一部を共有し、応募しているポジションにふさわしいと考える根拠となるスキルや経験を伝える。

2. 給与は採用のオファーを受けるか否かの判断する際の要素の一つにすぎないと認識する。その他の待遇についても詳細を知りたいと明確に伝える。

3. 希望給与額が要求ではなく対話の糸口だと受け止めてもらえるよう、柔軟な姿勢を示す。この会社で働きたいという熱意を伝えよう。