以下では、具体的な返答例を3つ示そう。

返答例1

「私の資格と経験が反映された、他社の同職の基準を上回る額を希望しています。私が行ったリサーチと、私の理解している職務要件に基づき、希望額はXドル~Yドルのレンジです。もちろん、給与は要素の一つにすぎませんので、報酬パッケージ全体の詳細について話し合えれば嬉しいです。特に、御社での成長と昇進の機会について、さらに知りたいと思っています」

返答例2

「〈職務内容に関連性のある具体的な名称〉での経験と専門性を考慮し、次の仕事ではXドル~Yドルの報酬を考えています。似たような職務についてリサーチし、同じような組織で働く人の話を聞いて、この給与レンジを設定しました。私は御社のチームにとって貴重な人材になれると確信しており、この職務への予算や従業員向けの福利厚生について、より詳しく伺いたいです」

返答例3

「同じような職務についてリサーチした結果、私のような経歴と経験を持つ同レベルの人材の場合、Xドル~Yドルのレンジの給与が期待できると理解しています。もちろん、報酬だけが重要なわけではありませんから、有給休暇やその他の特典を含む福利厚生パッケージについて詳しく伺いたいです。私にとって何より重要なのは、自分が成長できる場を見つけることです。自分に合った仕事を得るために、細かい数字については柔軟に対応します」

 最もしっくりくる返答例を選び、あなたらしさがにじみ出る表現にアレンジを加えよう。また、自身の経験と相手が求めているものがどう一致するかを強調するために、自身の資格についてもう少し詳しく述べるのもよい。

採用担当者やリクルーターは
なぜこの質問をするのか

 面接プロセスのこの段階で、面接官がなぜ、この質問を持ち出したのか。その理由を理解しておくとよいだろう。

 答えは簡単。彼らは、あなたの希望する額を出せるどうかを確認しておきたいのだ。候補者の希望する報酬を払えないのであれば、何度も面接を重ねて、オファーを固めるまでの自分たちの時間(とあなたの時間も)を無駄にしたくはない。

 キャリア開発の専門家で多くの著書があるビッキー・オリバーは、「雇用主が常にこの質問をするのは、あらゆるポジションに予算が設定されていて、話を進める前にあなたの希望額と予算が合致していることを確認したいからだ。面接官は通常、報酬や福利厚生に関する候補者の希望が、そのポジションに想定される給与レンジに収まるかどうかを知りたがっている」と説明する

 候補者にとっても、この質問に答えることで、今回の求人が自分に合っているか、提供される報酬や福利厚生について互いに理解しているかを確かめることができる。さらに、のちの採用プロセスにおける給与交渉の基準を設定する助けにもなる。

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「希望する給与額を教えてください」という質問に答えるか否か、そしてどのように答えるかは、もちろんあなた次第だ。ここで紹介したガイドラインを活用すれば、どのアプローチが最も心地よく感じられるか、どのアプローチが採用につながりやすいかを判断しやすくなる。さらに、気まずい思いをしがちな面接の場面で、このツールが気まずさを低減してくれるはずだ。


"How to Answer 'What Are Your Salary Expectations?'" HBR.org, February 13, 2023.