宣言型か探究型か
チャートの目的は、宣言、検証、探究の3つのカテゴリーに大まかに分かれ、検証と探究は関連している。
マネジャーが使うのはたいてい宣言型のビジュアライゼーションだ。通常はフォーマルな場で聴衆に対して宣言する。デザインの良い完成されたものが多い。しかし、だからといって反論できないものというわけではなく、宣言型のビジュアライゼーションは、提示されたアイデアについての議論を妨げるべきではない。良いビジュアライゼーションは議論を生む。
あなたがスプレッドシートのワークブックに売上データをまとめていて、そのデータを使って四半期の売上げや地域別の売上げをプレゼンするなら、目的は「宣言」だ。
しかし、上司が販売チームの成績が最近振るわない原因を知りたいとしたらどうか。あなたは季節周期が原因だと考えるが、確かではない。この場合、目的は「検証」になる。同じデータを使って、仮説が正しいかどうかを示すビジュアルを作成する。こうしたチャートはフォーマルなものではなく、デザインは読み解くことができれば十分で、プレゼンで使うレベルである必要はない。見るのは自分自身か最小限のチームだけだ。
仮説が検証できたら、宣言型のビジュアライゼーションを上司に提示し、「販売チームはこうなっています」と言うことができる。季節周期が原因でないと判明した場合には、別の仮説を立て、検証のための作業をする。
原因が思いつかないこともあるかもしれない。その時はワークブックを分析し、どのようなパターンやトレンド、異常値が見られるかを探る。例えば、販売担当者の担当地域の規模と成績との間に何か関係はあるだろうか。北半球と南半球の季節的なトレンドを比較したらどうだろう。天候は売上げにどう影響しているか。これが「探究」の作業で、デザインはラフで、通常は繰り返し行い、対話形式の時もある。
この探究の作業は、宣言や検証の作業ほど行われていないが、もっとやるべきだ。これはデータのブレストのようなもので、知見を得ることができる。「なぜ売上げが落ちているのか」「効率が良いのはどこか」「顧客は我々とどのように関わっているか」という戦略的に重大な3つの課題も、探究型のビジュアライゼーションがヒントになるかもしれない。
ビジュアライゼーションの目的を見つけるための問いは他に、「答えを出す必要があるのか、答えを確認する必要があるのか、答えを探す必要があるのか」というのもある。あるいは「アイデアを示しているのか、アイデアを調べているのか、アイデアを探しているのか」でもいい。
探究型になるほど自分がわかっていることの確実性が低くなり、情報の複雑さが増す傾向がある。目的が宣言なら自分一人で迅速に作業しやすいが、検証や探究になると、チームで作業したり専門家に頼ったりと、より多くの時間を必要とする。
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