これらのインサイトを応用する

 心理的ニーズというファインダーを通して顧客サービスを眺めることで、顧客が自律性、関係性、習熟性を得られるようにすれば、サービスを向上させる機会が豊富にあることがわかってくる。

1. 自律性を高めるために、指示ではなくコラボレートする

 顧客はベンダーの専門性を重視するが、何をすべきか指示されることを望んでいるわけではない。顧客は、一つの問題を一つの解決策で解決されること(42%)よりも、複数の解決策を提示されて、どれを採用するかは自分に任されること(58%)を好む。

 ポイントは、たとえ有効な解決策がわかっている場合でも、クライアントに選択肢を示して、主導権はクライアントにあると再認識してもらうことだ。

2. 関係性を深めるため、賢くつながる

 筆者らのデータによれば、顧客は、仕事を効果的に行えるように助けてくれるベンダーを評価する。筆者らは、ベンダーの関係性に焦点を当てた行動をいくつか提示し、それがベンダーのサービスに対する印象を改善するか、悪化させるか尋ねた。そこで最も高い評価を得たアクションは、(1)クライアントがプロジェクトで助けを必要としていないか連絡を取る、(2)クライアントがどういう状況か声をかける、(3)役立つ情報を掲載したニュースレターを毎月送付する、だった。一方、GIFを埋め込んだメールを送ったり、フェイスブックで友だちリクエストを送ったりするベンダーは、あまりよく思われていなかった。

 ポイントは、無理やり人間関係をつくろうとしないことだ。クライアントが仕事をしやすくなる方法に焦点を絞り、本物の人間関係につながる道を開こう。

3. 共感は控えめがよい

 筆者らの研究では、共感に関する興味深い結果も得られた。共感の表明は、友だちや家族のつながりを深める一般的な方法だが、顧客に不誠実と受け止められると、逆効果になりうる。サービスプロバイダーは、顧客が望んでいると思い込み、共感を顧客とのやり取りに織り込むことがある。しかし、これは間違いだ。筆者らの研究では、顧客は「自分たちの痛みを感じる」サービスプロバイダーよりも、豊富な知識で対応してくれるサービスプロバイダーをはるかに好むことがわかっている。

4. 習熟性を高めるために、クライアントのスキルを高める

 人間は、新しいことを学び、自分の能力を伸ばしたいという欲求を本来的に持っている。特に、若いB2Bの顧客は、仕事で自分の習熟性を高めることを重視している。したがって、インサイトを共有し、クライアントの問題をただ解決するのではなく、習熟性の経験を高めることが重要だ。

 顧客は、価値を最大化し、コストを削減し、時間を節約したい合理的な意思決定者と考えられがちだ。本研究の結果は、こうした見解には限界があることを示している。顧客がサービスプロバイダーを選ぶ際は、心理的ニーズを満たしたいという彼らの欲求は、時間や費用を節約したい欲求と同じくらい強い可能性がある。


"What Do Your B2B Customers Really Want?" HBR.org, March 16, 2023.