バーンアウトを防ぐために、従業員のニーズと仕事を適合させる方法
Illustration by Adamastor
サマリー:バーンアウト(燃え尽き症候群)を引き起こすのは、慢性的な職業性ストレス要因であり、それは人と仕事の不適合から発生するという。本稿は、不適合を6つに分類し、それぞれがどのような形で生じているのかを解説す... もっと見るる。そして適合性の向上させるための5つのステップを推奨する。 閉じる

職業性ストレス要因への対処法

 バーンアウト(燃え尽き症候群)は、慢性的な職業性ストレス要因、すなわち職場の慣行に組み込まれ、適切に対処されないまま高頻度で発生している事象に対する反応である。こうしたストレス要因は、やがて従業員の活力、関与、自信を削ぐ。従業員は疲弊感を覚え、シニカルになり、職務効力感を失い、「バーンアウト」の状態になる。

 職場にはバーンアウトの問題を解決するための多くの善意の試みがあるが、往々にして、問題の原因ではなく結果に対処している。バーンアウトはマネジメントと組織の問題であって、身体的、精神的な健康に関する問題ではない。したがってセルフケアを推進しても、たいてい回復の助けにはならない。バーンアウトに陥った従業員は炭鉱のカナリアだと思ってほしい。カナリアが気を失うと、私たちはその環境が危険だと認識する。「長期休暇を取ってください」とカナリアには言わない。

 バーンアウトの治療という概念をひっくり返す必要がある。個人のバーンアウトは、組織の中枢に対処が必要な切迫した問題があることを示している。本当に解決しようとするなら、バーンアウトの原因がこれ以上頻発したり激化したりしないように、職場を再設計すべきである。言い換えると、慢性的な職業性ストレス要因の根源となる部分に、いかに適切な対処を施せるかが問われているのだ。

 その答えは従業員と職場の適合性、つまり相性の向上にある。もちろん、個人のバーンアウトへの対処を支援するのはよいことなのだが、さらに重要なのは、人と仕事の適合性を高めることである。本稿では、リーダーやマネジャーが、どこから着手すべきかを示していく。

不適合のさまざまな原因

 バーンアウトを引き起こす種々の慢性的な職業性ストレス要因は、いくつかの不適合から発生する。それは言わば「靴に入った小石」(日常的な小さないら立ちや痛み)であり、疲弊感やシニシズム、職務効力感の喪失につながる。こうした不適合は、有能感や帰属意識、心理的安全性などの基本的な人間のニーズに対して、その人が取り組んでいる仕事が応えられていないことを反映している。不適合は6つの重要領域で発生し、職務に関係なくすべての人に当てはまる。

・業務負担
・コントロール
・報酬
・コミュニティ
・公平性
・価値観

 業務負担の不適合は、高い要求とそれに応えるためのリソースの不足(十分な時間、人員、情報、設備がないなど)としばしば関係する。コントロールの不適合は、仕事を首尾よく行うための自律性が不十分であることと関係し、報酬の不適合は、よい仕事をしてもそれに見合った評価や機会が与えられないことを意味する。コミュニティの不適合は、相互の信頼やサポートに欠け、無作法やいじめ、ハラスメントなど対人的に不健康な職場に最も極端な形で表れる。公平性の不適合は差別や不公平な慣行と関係し、価値観の不適合は職場に倫理的、道徳的、法的な対立があることを意味する。

 筆者らの共著The Burnout Challenge(未訳)では、この6つの領域について適合と不適合の両面から詳述し、さまざまな組織が適合性の向上に取り組んだ例を紹介している。これらは、読者が自分の職場にどの不適合が蔓延しているのかを評価する助けになるだろう。

 6つの不適合の枠組みは、慢性的な職業性ストレス要因の本質をよりよく理解するために活用できる。たとえば、筆者らが調査した従業員800人を抱える企業のCEOは、従業員が業務負担(負担が多すぎるとこぼしている)と報酬(さらに高い給与を望んでいる)に低い評価をつけると思っていた。ところが、調査と評価を実施したところ、最も深刻な不適合があるのは公平性であるという結果が出たので、CEOは衝撃を受けた。

 公平性に関連するストレス要因として突出していたのが「優秀サービス賞」で、圧倒的多数の従業員がこの賞には不正な操作があり、ふさわしくない人が受賞していると感じていた。候補者や受賞者の選定プロセスが広い範囲で蔑まれ信用されていないことがはっきりすると、この企業は賞の再設計に着手し、やがて優秀なサービスを適切に評価する新しい方法を構築するに至った。

 1年後、筆者らが調査のフォローアップ評価のために訪問すると、公平性の問題はもはや同社のマイナス面ではなくなっていた。この例は、不適合の具体的領域を突き止めることが、ストレス要因を突き止めるのと同じぐらい重要であることを示している。もしCEOが、優秀サービス賞が嘲笑されていた状況を「報酬」の問題として対処しようとしていたら、賞金を増額して、ますます事態をこじらせていたかもしれない。