不適合から適合へと変わるのに、もう一つ重要なのは柔軟性の獲得である。かつて米国空軍が完璧な戦闘機コックピットを追求した試みは、貴重な教訓を与えてくれる。1950年代、米国空軍の技術者は平均的な男性の体の正確な寸法を測定するという大規模プロジェクトに取り組んだ(当時の空軍パイロットは男性のみ)。脛の長さから、手をいっぱいに開いた状態の親指から小指までの幅まで、どの測定も軽視することなく行われた。彼らの目標は、平均的な男性に完璧にフィットする座席と機器を設計することだった。

 だがやがて彼らは、体のどの寸法も平均的である人はいないという誤算に気づいた。誰にもフィットしない、完全に平均的なコックピットをつくっていたのである。称賛すべきことに、彼らはそこでプロジェクトを投げ出さず、方向転換して、重要な寸法はすべて調整できるコックピットを設計した。このようにして、どのような身体的特徴を持つ人でも適合できるようになったのである。

 これは物理的性質をめぐる柔軟性を確立した例だが、従業員と仕事の適合性を高めるために心理的性質をめぐる柔軟性を追求する時にも、よい指針になる。たとえば、筆者らの調査では、上司によるマイクロマネジメントが従業員のストレス要因だとわかることが多い(コントロールの不適合)。いつ、どこで、どのように仕事をするかをコントロールできないことは、従業員の自律感や効力感をくじく。ただし、戦闘機の設計と同じように、コントロールの適合性についても、万人に適用できる解決策はない。企業は一つの理想的なコントロールのシステムを構築しようとするのではなく、上司と従業員の資質や職務の性格に合わせた、柔軟性のある対話を促進すべきである。

適合性を高めるために仕事を再設計する

 適合性を高めて、従業員が職業生活で達成感を感じられるようにすれば、彼らはバーンアウトから遠ざかり、仕事へのエンゲージメントが高まるだろう。リーダーは、職場の構築は創造的なプロセスであるという考えを受け入れるべきである。問題を解決するには、一つの「ベストプラクティス」を適用すればよいというものではない。リーダーの仕事は答えをひねり出すことではなく、従業員と協働して、彼らが職場で経験する持続的な不適合に対処することである。以下は、筆者らが推奨する5つの重要なステップである。

1. 不適合について意見を求める

 状況を調査して評価することは、リーダーが考えていることを追認する。それと同時に大切なことは、リーダーの新しいことを学ぼうとする開かれた姿勢である。最も直接的に不適合を発見できる方法は、従業員に体験を聞くこと、改善のための提案を問うことである(匿名で行う)。調査は従業員との対話の糸口となる。リーダーは聞いたことをもとに、よく検討する必要がある。何が慢性的な職業性ストレス要因であり、どうすればそれを修正し、あるいはなくすことができるだろうか。

「業務負担が大きすぎる」など、ストレートなメッセージが返ってくることもある。だがメッセージには、さらなる含みがあることも少なくない。ある企業では、たしかに業務負担は大きいかもしれないが、業務をめぐる従業員の自律性の程度のほうが大きな問題かもしれない(コントロールの不適合)。チームのメンバーがさらに尊重し合い協力的に仕事をすれば業務をこなせると、従業員が指摘したケースもある(コミュニティの不適合)。

 意見を求めたら、リーダーは必ずその結果をまとめて公表すべきである。「私たちはあなたたちの意見を聞き、そこからこのようなことを学びました」と伝える唯一の方法だからだ。筆者らはHBRの別の記事「従業員のバーンアウトを正確かつ倫理的に測定する方法」において、時間を割いて調査の質問に回答してくれた従業員に対し、リーダーがフィードバックをすることの重要性を指摘した。

2. さまざまな望ましい適合性を検討する

 次のステップは、新たな実施方法を開発することだ。調査の結果を企業全体と各部署にタイミングよく、熟考したうえで公表したら、ポジティブな変化の可能性にテーマを移して対話を継続する。よりよい実施方法のアイデアは、時間を置かずに求めることが大切だ。このステップでは、持続的な不適合に対しての実行可能な解決策を見つけるため、創造的な問題解決を呼びかける。

 たとえば、筆者らの最近の調査では、回答者の職場での体験を改善するためのアイデアを自由回答で2つ挙げてもらった。フィードバックのプレゼンテーションでは、回答を要約したスライドを映した。作業グループはそれらのアイデアを土台にして、変化を起こすための詳細なプランを立てることができるだろう。