最高の自分になれる「働く場所」のつくり方
Illustration by Mary Haasdyk Vooys
サマリー:どこで仕事をするかは、働く人にとって非常に重要な要素である。なぜなら、仕事をする場がキャリアを支え、自己意識を形成するからだ。本稿では、環境心理学、組織行動学、ワークプレースデザインの研究を統合した筆... もっと見る者らの理論をもとに、「最高の自分」になるために働く場所の物理的環境を整える方法を提供する。 閉じる

働く場所で自己は形成される

 すべての仕事には、行われる場所があり、その場所がどこで、どのようなものであるべきかについては依然として論争が続いている。ホームオフィスや寝室、近所のカフェやコワーキングスペース、電車での移動中やホテル、都市にある従来のオフィスなど、人々は働く場所をより意識的に選択している。どこで仕事をするかは重要であり、気づかないうちに、仕事をする場がキャリアを支え、自己意識を形成しているからだ。

 本稿では、環境心理学、組織行動学、働く場所に関するデザインの研究を統合した筆者らのワークプレース・アイデンティフィケーションの理論をもとに、職場で「最高の自分」になるためにワークプレイス(働く場所)の物理的環境をどのように考え、形づくることができるのか、知見を提供する。

現代における働く場所の形態と機能

 働く場所は、私たちが効果的に働き、他者とつながり、仕事をこなす能力に影響を与えるいくつかの要素で構成されている。

・機能的要素:仕事を円滑にする物理的特性
・感覚的要素:照明、音、匂い、質感、色、景色
・社会的要素:人との交流の機会
・時間的要素:過去の成果や将来の願望を示すもの

 しかし、筆者らが定義づける働く場所とは、仕事の環境をつくる特性の集合体以上のものだ。働く場所が重要なのは、プロフェッショナルとしてのアイデンティティ、つまり私たちがこれまでどのような人間だったか、そしてどのような労働者を目指しているのかを反映し、知らずしらずのうちにそれらを形成する場であるからだ。働く場所において節目となる出来事や思い出、人生を左右する経験を積み重ねていく中で、アイデンティティは働く場所と密接に絡み合っていく。

 あなたは仕事上の重要な関係を築いた最初の職場や、厳しい上司のいた最初の職場を鮮明に覚えているだろうか。近所のコーヒーショップに、こもって仕事ができる「自分の場所」があるだろうか。自分の仕事場やデスク、オフィスを「自分のもの」にするために、オブジェや写真、装飾品を飾っているだろうか。

 場所は私たちを形成し、私たちもまた場所を形成する。なぜなら場所は、「自分の場所」に対する私たちの基本的な欲求、帰属意識や受容、学習や成長、時間的な連続性や自分自身に関する一貫性の感覚など、アイデンティティに基づくさまざまな動機を満たすものだからだ。この過程で自己意識は働く環境に組み込まれ、私たちは働く場所を自己意識の一部としてとらえる。

 一方で、働く場所が最高の自分の実現に役立つこともあれば、努力を阻み、居場所がなく行き詰まったように感じさせることもある。こうした関係性を念頭に置き、最高の自分を発揮できる働く場所を意図的につくる方法が以下だ。

1. 現在の働く場所を評価する

 自宅、オフィス、その他の場所など、あなたが仕事をするそれぞれの場所について、その空間をどのように体験し、あなたのどの部分に関係しているのかを考える。最も重要なことは、その空間によってあなたがどう感じ、何ができて、どのような人物になれるのかを考えることだ。

 以下の質問に対する答えを書き出そう。働く場所をより意図的に形成するための道筋をつくることができる。

1. 自分の働く場所について、全体的にどのように感じているか。そこに入った時、直感的にどう感じるか。たとえば、落ち着くか、不安になるか、活力が得られるか、気が散るか、集中できるか。

2. あなたが働く場所はタスクの完了にどのような影響を与えるか。効率的かつ効果的に働けるか。タスクの完了を妨げる物理的、または社会的な障壁はあるか。一日の中でタスクの変更を容易にするか。

3. あなたの働く場所は社会的関係にどのような影響を与えるか。つながりがあって尊重されていると感じるか。孤立を感じるか。帰属感を覚えるか、部外者のように感じるか。

4. 働く場所は、あなたのプロフェッショナルとしての道のりを反映しているか。自分がこれまで歩んできた道、そして進歩を思い起こさせるか。将来の目標を思い描ける場所か。