働く場所をパーソナライズする。組織は、人と組織の連携をどう示すかによって、ソーシャルインクルージョンの場にもなれば、その正反対の場にもなる。働く場所をパーソナライズすることで、組織の中に自分のスペースをつくることができる。

 たとえば、賞状や資格証明書など気持ちを高めてアイデンティティを示すものや、過去に所属していたチームの大切な写真など、懐かしさを覚えるものを飾って仕事場をつくることができる。こうしたアイデンティティを示すものによって、職場に溶け込んだように感じ、共感が高まる。

 働く場所の使い方を変える。問題に行き詰まったり、無気力で活気がないと感じたりしたら、1日のうち数時間、違う場所で仕事をする必要があるというシグナルかもしれない。天井の高さや自然の要素など、環境の微妙な変化がしばしば異なるタイプの思考を刺激し、ウェルビーイングに影響を与えることは研究で示されている。

 時には、仕事で担っている複数の役割のニーズに対応するために、複数の場所が必要になることもある。たとえば、建物の別の場所に少し移動するだけで、自分の違う部分が刺激される。また、緻密な思考や計算が必要な仕事には一人になれる場所が好ましく、創造的思考が必要な仕事には活気ある共用の環境が好ましいだろう。日常的にスペースを替えることで、働く場所に対する感覚を広げ、さまざまな仕事をより効率的にこなせるかもしれない。

 働く場所を通じて適切なつながりを見つける。在宅勤務だと孤独を感じることがある。静けさに満足しているかもしれないが、週1日はオフィスに出勤したり、にぎやかなカフェで数時間仕事をしたりすることで、帰属意識を満たすことができる。

 また、他人と接する時間や方法を変えることで、仕事の社会的環境をどのように構築できるかを考えることもできる。朝のコーヒーを飲んでいる時、あなたは誰と接しているか。質問や「大きなアイデア」がある時、あるいはやっかいな問題に対してアドバイスが必要な時、同僚とどのようにコミュニケーションを取っているか。部屋のドアを開け放したり、定期的に人を訪ねて歩き回ったりして、自分の接しやすさをアピールしているだろうか。

 自分の境界線をつくる。年中無休の働く場所では、常に「オン」の状態でなければならないというプレッシャーを感じることがある。仕事と常につながっていることで、感覚が圧倒され、仕事の自分から抜け出せなくなる。物理的な環境とそれをどう使うかによって、自分のそれぞれの役割(親、労働者、ロックバンドのメンバーなど)の間に望ましい心理的な境界線をつくり、強化し、管理する機会が得られる。

 それぞれの自分でいる場所の間の境界線は、仕事において活力を取り戻し、最高の自分を発揮するのに役立つ。たとえば、仕事から離れることができて、仕事の自分を忘れ、別の大切な自分を発揮できる場所はあるだろうか。このような物理的な境界線を設けることは、仕事から立ち直り、今後仕事へのエンゲージメントを高めるために不可欠だ。

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 ここ数年、私たちは自分の人生について、働く場所のあり方や役割を含め、多くの考えを見直すことを迫られてきた。これまで以上に働く場所が私たち自身の大切な部分を形成し、反映することは明らかで、パフォーマンスとウェルビーイングに影響を及ぼす。

 私たちが仕事で利用できる場所、そしてそれを「自分のもの」にするための主体性には明らかに限界があるが、場づくりに取り組む機会はわずかでも常に存在する。働く場所が自分に適したものかどうか、この機会に考えるべきだ。


"How Your Physical Surroundings Shape Your Work Life," HBR.org, April 11, 2023.