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「視点の交換」の恩恵が最も大きい中規模企業
企業が競争力を維持し続けるには、それまでのやり方にたえず疑問を投げかけ、みずから抜本的な変革を繰り返すための方法を見出さなくてはならない。現状に安住することの心地よさに抗うことは容易でないかもしれないが、ある画期的なアプローチを採用すれば、自社のあり方を激しく揺さぶり、既存のやり方から脱却できる可能性がある。
そのアプローチとは、「視点の交換」(perspective swap)と呼ばれるものである。たとえば、CEOが1日だけ現場の顧客サービスの仕事をしてみたり、人事担当者が1週間にわたり営業の仕事をしてみたりするのだ。
「視点の交換」を実行する狙いは、ものの見方を意識して変え、
垂直方向の「視点の交換」
「視点の交換」は、企業の組織図で上下関係にある人同士の間で垂直方向に行うこともできるし、異なる部署の間で水平方向に行うこともできる。
垂直方向の「視点の交換」は、リーダーとその人物が率いるチームのメンバーの間で行われる。リーダーの地位にある人はしばしば、「パワー・ポジショニング」と呼ばれる状態に陥り、自分自身のニーズと目標にしか意識が向かなくなる。その点、「視点の交換」を行えば、リーダーはこの問題を克服し、みずからのチームで実際に起きていることを理解しやすくなる。
北欧のフィンランドに本社を置く中規模のITサービス企業ビンシトでは、毎月1人の社員を選び、1日限定でCEO役を経験させている。このプログラムでCEO役を務める社員たちは、
「視点の交換」を組織の最上層部で実行する場合は、特に大きなリスクがついて回る。不適切な人物が無制約の予算を手にした場合、裏目に出れば大きな弊害が生まれかねない。そのようなリスクを小さくする手立てはある。一つは、シミュレーションを用いるというものだ。
サンフランシスコに本社を置くクラウドインフラ企業のハシコープは、年間計画を定める最高会議でバーチャルシミュレーションを取り入れている。それにより、既存の権力構造を揺さぶろうというわけだ。自社のリーダーたちをいくつかのチームに分けて、2日間にわたってCEOになったつもりで行動させる。その際、あえて想定外の出来事が発生するようにし(「つまずきの石」と呼ばれている)、それぞれのチームが変化に素早く対処できるかどうかかを試すのだ。