激動の世界のリーダーとして

 激動の世界で成功するには、持続的な学びが不可欠だ。そうした学びに全員を参加させるために重要なリーダーの行動を特定した。以下の3点を紹介しよう。

1. 変化に注目させる

 持続的な危機は長く続き、曖昧なため、誰もが変化を見逃しやすい。リーダーも例外ではない。従業員が自動的に行っている意味付けを上書きすべきタイミングが来たと、明確に伝えよう。これはリーダーの中心的な役割である。チームのマネジャーに対し、「これが計画です」と言う代わりに、「この新たな環境で何が効果的かを知るための実験的な方法をいくつか示します」と伝えるよう促そう。

2. 消火活動に報酬を与えるのをやめる

 突発的な危機では緊急性が優先される。しかし、緊急事態への対応が習慣化することで、多くのチームが緊急事態後もずっと、質問や考察を封じ込めるようなやり方で、ひたすら急いで課題をこなし続けている。こうした習慣を断ち切ることが、リーダーの重要な役割だ。

3. 間口を広げる

 より幅広い声を聞き入れるための実験と改善に向けて、仕組みとプロセスを構築しよう。家電大手のハイアールのように、トップダウンの指揮を拒む一方で迅速な実行を維持するために、組織をフラット化するという劇的な対策を講じた組織もある。また、多様性の豊かなチームを立ち上げて業務プロセスの改善や再設計に当たらせるなど、より広範な関与に向けたプロセスの変更(大規模な構造改革ではなく)に取り組む組織もある。

 激動の時期は今後も続くため、協議を通じて多様な声を取り込むことが重要だ。緊急的な対応が何年も続き、トップが指示を下すアプローチが優先されてきたが、今日のリーダーシップチームは意図的にルーチンに揺さぶりをかけ、分権的で協調的な意思決定を導入(または再導入)しなければならない。

新たな現実

 私たちはいま、不安定で不確実な世界に生きている。新型コロナウイルスが人生における唯一、あるいは最後の危機ではない。気候変動から銀行破綻の連鎖まで、危機は身近に存在する。最近、元米財務長官でハーバード大学教授のローレンス・サマーズが指摘したように「こうした事態に注目してきた40年間の記憶の中で、これほど複雑で、異質で、多岐にわたる課題はない」。

 この新たな現実において、突発的な危機と持続的な危機について認識し、対応を切り替える能力は、リーダーシップの中核を成す。優れたリーダーとは、適切なタイミングで適切な枠組みを選び、それを活用して組織を成功に導く手腕を有するリーダーなのである。


"Leading Through a Sustained Crisis Requires a Different Approach," HBR.org, June 20, 2023.