従業員が実力を最大限に発揮できていない時、リーダーは何をすべきか
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サマリー:なぜ従業員は潜在能力を十分に発揮できないのだろうか。リーダーは、通常のパフォーマンスと最高のパフォーマンスの違いを明らかにし、その理由を認識する必要がある。つまり、具体的な技能や能力の実例を挙げて従業... もっと見る員の実力を把握し、その原因を解明するのだ。本稿では、原因を個人的な問題、対人関係の問題、そしてリーダーシップの問題に分類して考察し、従業員をサポートする方法を解説する。 閉じる

従業員が実力を最大限に発揮していない理由を探る

 あなたは部下のキラリと光る能力、もしかすると天才的といえるレベルかもしれないものを垣間見たことがあるだろう。それなのになぜ、彼らはそのポテンシャルを発揮できないのか。

 従業員の能力や技能の向上、そしてプロフェッショナルとしての成長を気にかけるリーダーにとって、本人たちが自分の力をもっと発揮しようと率先して行動していないように見えるのは、とてもいら立たしいことだ。時には、彼らが認識していないのか、力を伸ばそうという意思がないのか、と考えあぐねることもあるかもしれない。自分の実力を発揮するためには何が必要かわかっていないのか、それとも単にやる気がないだけなのか、と。

 従業員の「典型的なパフォーマンス」(通常の仕事ぶり)は、「最大限のパフォーマンス」(その人の実力)ではないと、あなたが考えるのには一理ある。そこでまず、こうしたパフォーマンスを明確にし、数量化することが重要だ。

 もしかするとあなたは、従業員が最高のパフォーマンスを発揮した具体例、たとえば極めて重要な場面で説得力のあるプレゼンをしたことなどを思い浮かべているのかもしれない。あるいは、目に見えない重要なパターンに気づく、複雑で混沌とした状況に秩序をもたらす、新しいことを学ぶといった「知性」、洞察力のある質問をするなどの「好奇心」、思いがけない考察や、独創的で有用な新しいアイデアを示すことなどとして表れる「創造性」といった、貴重なスキルを示した時を思い出しているのかもしれない。一度でもそうしたことがあったなら、従業員にその能力があることは明らかだ。

 だとすれば、従業員が実力を最大限に発揮していない理由を探らなければならない。筆者らは、その理由を探るに当たり、個人的な問題、対人関係の問題、そしてリーダーシップの問題という3つの大きなカテゴリーに分類できることがわかった。

個人的な問題

 人が実力を最大限に発揮できない理由の一つは、そもそも自分の実力に気づいていないからだ。

 専門性、才能、成果のいずれの領域でも、ある人が自分の実力だと思っているレベルは、その人の実力の10%以下といわれる。あなたはリーダーとして、自分がマネジメントしているチームメンバーに、効果的なプレゼントを贈ることができる。すなわち、彼らの能力を、場合によっては本人よりも先に見抜き、それを本人に示すことだ。実際、フィードバックは従業員の成果を向上させる重要な促進剤となる。ところが研究によると、フィードバックの6割以上が、相手を高める役に立たなかったり、むしろ相手にダメージを与えている。

 従業員が実力を最大限に発揮した時は、それを具体的に称えて、「最高」とはどういうことかに気づかせ、そのために何をしたのかについて会話をしよう。見事なスピーチができたのは、練習や準備に時間をかけたからなのか。事前に聞き手の声を聞いたから、関連する事例を挙げられたのか。優れた働きを見せた人に、その理由を掘り下げて探るよう促すと、その再現方法を気づかせることができる。つまり、あなたは上司ではなくコーチだと考えよう。

 人が潜在能力を発揮できないもう一つの大きな理由は、ずばりモチベーションにある。かつて、従業員が優れた仕事をするのを見たことがあるなら、実力がないわけではないことは明らかだ。したがって、その従業員のモチベーションのレベルを探る価値がある。

 チームメンバーに調子はどうか尋ねてみよう。急な変化があった場合はなおさらだ。もしかすると、プライベートで困難に直面しているのかもしれないし、バーンアウト(燃え尽き症候群)になりかけていて休養が必要なのかもしれない。あるいは、現在のポジションに停滞感があったり、ワンランク上の目標など新しい課題を必要としているのかもしれない。