対人関係の問題

 従業員が実力を発揮できないのは、環境つまり周囲の人々が原因のこともある。ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)教授のボリス・グロイスバーグの研究チームが示してきたように、スター社員は転職すると、かつての成功を再現できないことが多い。

 その活躍を助けたサポート要因、たとえば前の会社特有の知識やネットワークなどがもはや存在しないからだ。実際、中途採用者は一般的に、内部昇進者よりも大きな報酬を得ているにもかかわらず、内部昇進者ほどの付加価値をもたらせないことが多い。それは、彼らの成功を可能にした条件がもはや存在しないからであることが多い。

 同じように、同僚が異動になる、新しい同僚が加わったなどでチームのダイナミクスが変わったり、役割や責任が変わったり、別の人が昇進あるいはボーナスを得たなどにより、その人の仕事ぶりや昇進が認められなかったりした結果、従業員が壁にぶつかっている可能性もある。

 従業員の才能は変わっていなかもしれないが、それを発揮する能力が変わったかもしれない。その場合、原因となっているダイナミクスについて正直に話し合い、その緊張を見つめ直したり仲裁したり、成功しやすい新しいポジションに異動させるほうがよいかもしれない。

リーダーシップの問題

 不快なことだが、従業員のパフォーマンスの少なくとも30%は、その従業員がどのように管理されているかに起因することを覚えておいてほしい。

 つまり、あなたのリーダーシップが、従業員が実力を発揮するか否かに大きな影響を与えるのだ。従業員をサポートして育てているつもりが、マイクロマネジメントや緩すぎるマネジメント、目標の伝達不足など管理面の不手際により、従業員の才能を潰しているおそれがある。

 この憂慮すべき新事実に関して朗報なのは、上司であるあなたがしっかりコントロールできる範囲にあることだ。あなたの従業員への情報伝達方法、フィードバックの与え方、権限の与え方、そして管理方法に関する戦略をA/Bテストにかけることで、自分の指導の結果を直接検証できる。そして従業員が実力を発揮できない最大の原因が、実は自分にあるのかどうかを分析できるのだ。過去に効果のあった戦略や、別の従業員に有効だった戦略をテストすることも役に立つだろう。

 人は皆ユニークな存在であり、誰にでも効く万能の戦略はない。しかし、信頼関係のある従業員とより多くの時間を過ごし、建設的な批判やまっとうな称賛、評価、リソースを含む、より多くのフィードバックを与えると、従業員が実力を発揮する可能性が高まることは、総じて真実だ。

 最後に、人間は機械ではないことを覚えておこう。すべての従業員が常に実力を最大限に発揮することを期待すべきではない。実際、世界一クリエイティブで才能のある人たちは、どのような分野であれ、そのパフォーマンスに大きな波があるものだ。

 なぜなら、結果を強力に牽引し、斬新で並外れたパフォーマンスをもたらす最大の刺激は、インスピレーションだからである。したがって、適宜責任を問いつつも、ある程度の怠慢は大目に見て、能力を発揮するための自然な波を尊重しよう。それこそが、優れたマネジャーがすべきことである。

 加えて、従業員の仕事ぶりに見られる矛盾や不規則な要因は、上司であるあなたにも当てはまるかもしれない。したがって、自分が実力を最大限に発揮しているか否か考えたり、自分の能力発揮を妨げている要素を検証したりすることは、従業員の能力発揮をサポートする際の助けになるだろう。

 従業員のパフォーマンス、そしておそらくあなた自身のパフォーマンス不足を理解するためには、思慮深さと共感が必要だ。本稿で述べてきた可能性を検討すれば、あなたのチームをよりうまく、より頻繁に、最高の状態に導けるだろう。


"When Your Employee Isn't Reaching Their Full Potential, HBR.org, July 24, 2023.