スポンサーシッププログラムを最大限に活かす3つの戦略
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サマリー:組織におけるスポンサーシップの成功は、支援を受ける「スポンシー」である若手人材の賢明さにかかっている。すなわち、みずからスポンサーとのミーティングの予定を組むなど、戦術的で積極的な姿勢が必要だ。しかし... もっと見る、このように行動できる若手人材はほとんどいない。本稿では、若手人材がスポンサーとの関係を成功させるための3つの戦略を提案する。 閉じる

若手人材が支援者をコントロールするのは困難

 組織の生産的なスポンサーシップを支えているのは、支援を受ける人、つまりスポンシー(主に若手人材)の賢明さである。支援をする側であるスポンサーが、戦術的な支援やアドボカシー(擁護・支持)を発揮する機会を見極めることができるかといった点で、スポンシーの賢明さが問われる。

 ハーミニア・イバーラと筆者が以前指摘したように、優れたスポンシーはスポンサーシップの「管理人」になる。率先してスポンサーとのミーティングの予定を組んだり、自分の成長不足に注目したり、スポンサーの知り合いの上級リーダーに紹介を頼む人もいるかもしれない。

 しかし、こうした行動を起こすには、スポンシーがスポンサーとの関係において積極的で自信のある姿勢を取ることが必要で、多くのスポンシーにそれができるとは思えない。なぜなら、彼らは職場で数多くの障壁に直面している。それは個人的で内的なものもあれば、構造的で外的なものもある。

 筆者は、スポンサーシップに投資する組織のコンサルタントとして、若手人材がスポンサーとの関係を成功させる上で、大きな困難に直面するのを見てきた。そして、彼らがそれを克服するための3つの戦略を考案した。

インパクトステートメントを作成する

 スポンシーは、みずからのユニークな価値と影響力を示すことで、スポンサーにレディネス、つまり準備が整っていることを示す。一方、正式なスポンサーシッププログラムは、露骨な自己アピールが罰則の対象となりがちなグループのメンバーを対象とすることが多い。たとえば、謙虚さを重視するジェンダー規範の中で育った女性や、慎み深さに重きを置く文化の出身者などだ。

 謙虚さや慎み深さは悪いものではないが、こうした特徴を持つスポンシーは、意欲や主体性が欠如している印象を与える。その結果、スポンサーがどのように支援すればよいのかわからなくなり、自信を持って支援することが難しくなる。

 この問題を回避するために、企業はスポンシーに対して、簡潔な「インパクトステートメント」の作成を奨励することができる。自分の役割について概説し、並外れた能力を強調し、業績を数値化し、特徴的な性格や目的、最も誇れる経験を記した短い文書、あるいはスライドのことだ。

 自己アピールは多くの人にとって容易ではないため、マネジャーはスポンシーのインパクトステートメントの作成を指導するとよいだろう。マネジャーができない場合、スポンシーは定型の文書を用いて、ピアグループで他のスポンシーと一緒にステートメントを何度もつくり直して完成させる。

 ハイテク企業のディレクターであるラテン系のシルビオは、ピアグループでの作業で、インパクトステートメントにレベルの高い創造的な活動を含めたが、自分の与えた影響力を数値化しなかった。仲間からその理由を尋ねられた彼は、「私の民族は自己アピールはしないから」と冗談めかして言った。ピアグループが、彼のユニークな貢献についてさらに具体的に説明するよう勧めると、会社に大きな収益をもたらした製品のデザインなど、多くの貢献が明らかになった。

 こうした「プル戦略」は、自分の才能と可能性を最大限にアピールするために多くのスポンシーが必要とする心理的安全性を生み出す。そしてそれは、効果的なスポンサーシップの基盤である。また、スポンサーシップの機会を模索する際に、スポンサーとスポンシーが参照する貴重な情報を把握するのにも役立つ。