3. インクルーシブなリーダーは活発な学習と一貫した実行を歓迎する

 筆者らが話を聞いたリーダーたちは、インクルーシブであるための方法は、受動的に身につくのではなく、積極的に学ぶべきものだと強調した。人間が生まれながらにして持つ癖や傾向にはバイアスが含まれていて、インクルージョンを実現するためには、これを計画的かつ一貫して検証し、挑戦し、見直す必要があると考えていた。ある金融機関のリーダーが語ったように、私たちは女性や社会的な代表が少ない集団の従業員をより多く採用したいと願うだけではなく、彼らを採用するための意図的かつ体系的な採用プロセスを展開する必要がある。

 意図的な取り組みはさまざまな形を取りうるが、とりわけ有用なのは、DEIの取り組みを既存のプロセスやシステムに組み込んで、一貫性と責任を確保する方法だ。たとえば、採用時の候補者プールに多様性を担保することを義務づけたり、成績評価指標にインクルージョンへの努力を含めたり、直属の部下の間でのフィードバックを促進するよう管理職を指導したり、直属の部下のキャリア開発について管理職に責任を持たせたりするといった方法がある。

 たとえば、あるメーカーの人事リーダーは、責任を確保するために、全マネジャーを対象に、部下たちの意見を聞くセッションの進め方について研修を行ったうえで、そこで得た意見に基づきマネジャーたちが自分のやり方を見直す方法について、アイデアを発表してもらったという。

 また別の企業では、さまざまな集団別における、採用や希望退職、昇進、社内異動の割合、および異なる事業領域での従業員満足度を追跡するシステムを使い、四半期ごとに強化すべき点や変更すべき点について事業部門のリーダーらと議論している。

 正式な制度がなくても、リーダーがインクルージョンを一貫して高められる方法がある。たとえば、ある保険会社では、さまざまな人の経験を理解するために、主に白人で構成される上級管理職チームが定期的なミーティングを開き、『ホワイト・フラジリティ 私たちはなぜレイシズムに向き合えないのか?』や、米国における黒人女性の経験について書かれた本などについて意見を交換した。

 会社のカレンダーに、あらゆる文化の祝日や祝祭日を記載して祝うだけでなく、全従業員にとって有益な学びとなるこうした祝日のいわれや歴史を定期的にメッセージとして共有したリーダーもいる。そうすることにより、インクルージョンが極めて重視されていることをアピールし、各個人にも自身のバックグラウンドにかかわらず、インクルージョンを積極的に推進するよう促した。

 リーダーが日常業務やポリシーに新しい学習を取り入れ、おきまりの見解や習慣を継続的に拡大していけば、多様な従業員のニーズを理解し、より活気ある職場文化を生み出しやすくなる。

4. インクルーシブなリーダーは、平等な機会と公平な結果を確保する

 筆者らが話を聞いたリーダーたちは、従業員に成功する機会を平等に与えることに大いに力をそそいでいた。そのために、彼らは個人(特に歴史的に代表が少ない集団のメンバー)にそれぞれ特有のニーズがあることを認識した。また、そのようなメンバーが直面する目に見えない障害に敏感に反応し、彼らを支援するための積極的な手段を講じた。

 たとえば、ある法律事務所のパートナーは、親戚に法律家のいない初代弁護士(歴史的に代表が少ない集団出身者が多かった)が、そうではない非初代弁護士たちと比較して直面しやすい問題があることに気がついた。そこで、これらの弁護士には過去の実践例をより多く提供し、担当案件の研究に費やす時間を増やし、依頼人とのミーティングで発言する機会を増やし、勤務評価では通常よりも細かい項目を追加するといったサポートを提供した。

 また、あるグローバルテクノロジー企業のDEI担当者は、マネジャーがチームメンバーをサポートするためのコーチング的対話の研修を行うだけでなく、チームメンバー自身が昇給を求めたり、キャリアアップ計画を立てたり、マネジャーの指示を得たりする方法についての研修も実施した。これは疎外された集団の従業員が、こうしたことにとりわけ困難を感じると話していたからだ。あるプロフェッショナルサービスファームのシニアマネジャーは、歴史的に代表が乏しい集団の拡声器役を自負して、彼らの考えをシニアリーダーに定期的に進言した。

 リーダーは、経歴や出自など、バックグラウンドによって異なるニーズがあることを踏まえたサポートを提供することにより、全チームメンバーにとってより公平な土俵を提供した。多数派のメンバーが、なんらかの取り組みを不公平だと感じ反発してきたときは、リーダーは時間をかけて、なぜ差別化されたサポートが必要なのかを丁寧に説明し、自分自身の経験に関連づけ、共感を生み、そのサポートがチームと組織全体にもたらすメリットを説明した。