破局的思考を調整する方法を学ぶ。破局的思考に陥りやすい人の多くは、自分の感情を偽りのポジティブさで覆い隠そうとする。しかし、こうした極端な方法は、回避しようとしている恐怖を深めるだけだ。一度破局的思考に陥っても、それを長引かせるかどうかは自分でコントロールできる。ストリンガーは次のように語る。
私たちが処理する感覚の80%以上は、脳から身体にではなく、身体から脳に伝わるものである。したがって、破局的思考を軽減したいのであれば、まず身体を中心に対処の計画を立てること。私たちは身体の本来の状態を変えずに、心だけを変えようとしすぎるのだ。呼吸法の練習や、屋外で過ごす時間、自分の本当の気持ちを率直に言語化するといったことは、よりバランスの取れた視点をもたらし、副交感神経系が私たちを落ち着かせ、ストレスホルモンであるコルチゾールのレベルを素早く低下させることがわかっている。脳が自分の感情に正確な名前をつけると、扁桃体を落ち着かせる神経伝達物質が分泌される。
現実に根ざした恐れと、自分がつくり上げた恐れを区別する。破局的思考に苦しむ理由の一つとして、現実の経験に根差した不安を抱えていることがある。過去のトラウマや困難は現実に起きた結果である以上、たとえ極端な予想でも、恐れている結果がまったく根拠のないものとは思えないかもしれない。
メルニックは次のように語る。「女性や人種的マイノリティなど社会的な代表が少ないグループの人は、採用や昇進を見送られたり、投資家から資金を得られなかったりした経験があるだろう。また、専門職の人は1年以上職を探して苦労したことがあるかもしれない。こうした実体験の記憶は、恐れているネガティブな結果を一般化することにつながり、より多くの不安を引き起こし、悲惨な結果に対する認知のゆがみを長引かせる。自分には状況を変える力も、効果的に対処する力も、その状況に特有の結果を引き出す力もないという結論を補強するのだ」
このような時は、過去の問題から学んだ真実の要素と、これから起こることについてあなたがつくり上げた破滅のシナリオを区別することが肝心だ。レジリエンスを発揮して、困難をうまく乗り越えたときのことを思い出そう。自分がどのくらい状況をコントロールできるか、あるいはできないかについて、制限的な思い込みを詳しく検証する。「悲惨な結果を恐れて力を喪失するのではなく、自分の主体性を活性化して、力を取り戻す方法を見つけよう」とメルニックは提案する。
自分の破局的思考が他人にもたらす結果を認識する。リーダーとして、あなたの気分はチームや部門、組織の雰囲気を決める。デレクがフィードバックついて心配していることは、チーム全体を不安に陥れた。健全な環境を維持するためには、最悪のシナリオに対する自分の傾向が、周囲にどのような影響を与え得るかを理解しなければならない。必要なら謝罪して、自分がこの傾向を抑えるためにどのような対策をしているかを話す。そうしなければ破局的思考は感情的に伝染し、組織に害を及ぼしかねない。
たとえば「上司に叱られることをひどく恐れる中間管理職は、その部下との間に有害な文化をつくり出している。彼らは上司に恥をかかされることを避けようとして、破局的思考に陥っている」とストリンガーは言う。「それが不安と無関心が培養される土壌をつくる。従業員はミスを避けようと必死になり、創造的で協力的なエネルギーをみずから封印する。上司が自分たちに対してベストを尽くしてくれないことを知れば、彼らも低いパフォーマンスでお返しをするのだ」
あなたの組織において、あなたの破局的思考が創造性やチームの結束や喜び、勇気を阻害している可能性を洗い出す。そうした傾向が、どのようにチームのパフォーマンスに対するあなたの視野を狭めているのか。あなたの周りの人々は用心深く振る舞い、あなたにポジティブなニュースしか伝えていないのではないか。
「破局的思考に陥ったリーダーは自己中心的になって、チームや組織を犠牲にして自分のことしか考えられなくなるものだ。さらに、市場や組織における重要な手がかりや機会を見逃しかねない」とメルニックは言う。どのような結果が起きても、それを最小化して評価したり無視したりする誘惑に屈してはならない。
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破局的思考に陥りやすい傾向を、羞恥心や罪悪感、軽蔑として片づけるのではなく、自身の物語において果たしてきた役割に関心を持とうというメッセージだと考えてほしい。破局的思考が有益かどうかを考える際は、自分に優しくなろう。変わることができるという希望を持つために、「私は大げさだ」「ネガティブなだけだ」といった非難の言葉を、「私は自分が見ている脅威をどんなふうに誤解しているのだろうか」といった問いかけに置き換える。
最終的に、破局的思考に陥りやすい傾向が自分を癒し、成長させ、学ばせるための機会になっていることを受け入れるよう。ストリンガーは次のように勧める。「警戒心が強い神経系と、仲良くすることを覚えなければならない。困難な感情が出てきたときに、勇気と思いやりを持ってそれを認識して、その感情に反応するのではなく対応する方法を学ぶのだ」
編集部注:登場した個人名は仮名。エピソードは許可を得て使用している。
"Do You Understand Why You Catastrophize?" HBR.org, October 04, 2023.