3. 危機での学びを制度化する

 危機が過ぎ去ると、すぐに先に進みたがるリーダーが多いが、危機からの学びを制度に落とし込むための時間を確保すべきだ。

 そのために、筆者らは3段階のアプローチを提案している。自身のパフォーマンスを評価する(同僚との比較、時間推移の観点から)、教訓を導き出す(どの能力が欠けていたか、どの決断が正しかったか・間違っていたかなど)、必要な強化策を実施する(危機時の行動計画を策定する、より柔軟な協力体制を構築するなど)の3段階である。

 あるCEOが語ったように、「一握りの個人によるイニシアティブと緊急時の対応能力に頼っていては、レジリエンスという持続可能な力を生み出すことはできない」のだ。

4. レジリエンスの測定基準を取り入れる

 レジリエンスがもたらすメリットを従来のビジネス指標で測るのは難しい。その結果、リーダーは目先の効率を重視した意思決定を行ってしまう。

 長期的な価値創造を重視する方向に舵を切るために、企業は柔軟性と対応力を測定し、そのインセンティブを高めるような新たな指標を導入すべきだ。たとえば、回復率(競合他社と比較して、どれだけ迅速に危機以前の業績水準に戻せたか)や、危機後の業界や経済の盛り上がりに占める各社の貢献度など、過去に遡って数量化できる戦略的指標がそれに当たる。

 同様に重要なのが、次に訪れる危機への企業の準備状況を評価するオペレーションの指標だ。たとえば、資本や生産能力の柔軟性(どれだけの施設や生産能力を、どれだけ迅速に再配分できるか)や、オペレーションの俊敏性(バックアップシステムや設備をどれだけ迅速に稼働できるか、など)を分析することが挙げられる。

 レジリエンスを体系化し、制度化することで、企業は発生確率は低いが、甚大な影響をもたらす出来事への耐性を高めておける。また、柔軟性を活かして「新たな」経験曲線に飛び乗ることで、変化した状況下でも成功を収められる。

 ただし、オペレーションにおいて取り組むべきフロンティアは、これだけではない。

選択性:オペレーションの優位性の次なるフロンティア

 私たちはいま、スケールや時間軸の異なる複数の危機が同時多発的に発生する、劇的な不確実性の時代に突入している。そのため、企業は今後起こりえる非常に広範な未来に対応できるよう準備を整える必要がある──しかも、昨今の資産コストの状況を考慮すれば、その準備を効率的に進めなければならない。つまり、新たな時代を乗り切るためには、効率性と柔軟性の両方を巧みに組み合わせる必要がある。

 そうした状況下で成功するには、オペレーションにおけるラディカル・オプショナリティ(徹底した選択性)を可能にし、創造する必要がある。これは、将来の競争優位性の基盤となりえる選択肢のポートフォリオを効率的に構築する能力、そして、事態の進展に合わせてポートフォリオを再調整し、重みづけを変更する能力である。

 企業がオペレーションにおけるこの次なるフロンティアを制するためには、どうすればよいのだろうか。