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優れたリーダーは感情を語る
フェイスブックは、「素早く動き、破壊せよ」を非公式のモットーにしてきた。しかし、リーダーシップ論の専門家であるフランシス・フライとアン・モリスに言わせれば、このモットーには重大な欠陥がある。リーダーがこのモットーに従っていては偉大な企業を築けない、というのである。
傑出したリーダーは、「素早く動き、修正する」ことを実践している。自社が直面している手ごわい問題を解決しつつ、より強力な組織を築くのだ。フライとモリスの新著Move Fast and Fix Things (未訳)では、リーダーが難しい課題に対処し、素早く変化を起こすための5つの戦略を紹介している。
- 1. 自社が直面している真の問題を明らかにする(「変革の足を引っ張る組織に共通する10の特徴」を参照)
- 2. ステークホルダーとの信頼を構築(もしくは再構築)する(「信頼されない組織に共通する10の問題」を参照)
- 3. チーム全体が成功できるように、インクルーシブ(包摂的)な環境をつくる(「誰もが活躍できる環境をつくる10のメリット」を参照)
- 4. 起こしたい変化について、説得力あるストーリーを語る
- 5. 切迫感を持って、計画を実行に移す
ここでは、5つの戦略のうち「4. 起こしたい変化について、説得力あるストーリーを語る」を取り上げ、実現したい変化について明確で魅力的な物語を展開することに焦点を当てる。変革を起こすためのリーダーシップにおいて、「感情」はあまり議論されていない要素である。本稿ではストーリーを語る際に活用できる10の感情を説明する。
* * *
筆者らの考えによれば、感情は概して、オフィスで過小評価されてきた。もしあなたが筆者らのようにある程度の年齢の女性であれば、「感情」のような湿っぽい要素を職場に持ち込まないように、と釘を刺された経験があるかもしれない。そして、あなたがある程度の年齢の男性であれば、感情を表に見せないことにより、有利な扱いを受けたことがあるかもしれない。
この類いのメッセージによって多くの機会損失が生まれてしまった。感情は、人を説得し、影響を与えるための強力なツールになりうるだけでなく、私たちを人間らしい存在にしている要素であり(他者と関わる際に役立つ)、自分の周りの環境について重要な情報をもたらすものでもあるのだ。
言うまでもないことだが、重要なのは、自分の感情に気づき、それをうまく機能させる一方で、感情に脳のコントロール機能をハイジャックされないようにすることである。この点を理解してもらうために、以下では、職場で過小評価されがちな感情をいくつか紹介する。この中には、厳密に言えば「感情」とは呼べないものも含まれているが、趣旨はご理解いただけるだろう。
(1)いら立ち
目覚ましい成功を収めている連続起業家のポール・イングリッシュの場合、画期的なアイデアはことごとく、いら立ちから生まれた。たとえば、航空チケットを購入しようとする際、あちこちの航空会社のウェブサイトにアクセスしなくては用が済まないのをわずらわしく感じ、そのいら立ちの感情に突き動かされて、航空チケットの一括検索・価格比較を行えるオンラインサービス「カヤック」を立ち上げた。
イングリッシュは、MBAの授業でゲスト講師を務める時、受講生たちに、おのおのがいら立ちを感じる何かの写真を持ってくるように求める。多くの場合、こうした授業の中で、有効なビジネスのアイデアが生まれる。
(2)後悔
いら立ちの一種ともいえるが、後悔の感情は、自己と他者の境界線上で生まれることが多い。たとえば、私たちは、同僚に対して不用意なことを述べたことや、大事なタイミングで言うべきことを言わなかったことを後悔する。
後悔の感情を抱えて生きるのは、心地よい経験ではない。しかし、後悔は、次にどのような振る舞いをすべきかという指針をもたらすことが多い。また、何を整理すべきかを知るための手掛かりになる場合もある。たとえば、あなたが同僚に対する発言を3日経ってもまだ後悔しているとすれば、その後悔の感情は、謝罪すべきだというシグナルと受け取るべきだろう。
(3)情熱
米国以外の国の読者は意外に感じるかもしれないが、米国人もしばしば、仕事に情熱を抱きすぎないように、と教えられることがある。実際、本稿の筆者の一人は昔、女性は「興奮」という言葉を使わないほうが得策だと助言されたことがあった。そのような言葉を用いると、いかにも「女性らしい」コントロール不足のイメージを与えかねない、とのことだった。
あなたがこの種の助言に従いたいのであれば、情熱を別の言葉で言い換えればよいが、そこで忘れてはならないことがある。それは、変革を目指してとりわけ大きな成果を挙げるリーダーたちは、みずからが築きたいと考える世界が望ましいものであると熱心に「布教」し、ことあるごとに情熱を見せているのだ。