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忙しいマネジャーにおすすめの「日常的コーチング」
今日の職場では、リーダーシップスタイルの転換が求められている。すでに繰り返し耳にしているだろう。指揮命令型のモデルは過去の遺物だ、と。いまの時代に必要なのは、優れた質問を投げかけ、問題解決を促進し、チームにサポートと指導を提供できるマネジャーだ。つまり、コーチング文化を実践するマネジャーが求められている。
ただし、この理想を実現するのは、言うまでもなく難しい。開発プログラムを通じてコーチング能力の向上に多大な資源を投じているにもかかわらず、多くの組織でマネジャーの行動にほとんど変化が見られず、マネジャーと従業員の関係も改善されていない。
公平を期すために言うと、多くのマネジャーは、従来と異なるやり方をしたり、長時間のトレーニングプログラムに参加したりする時間の余裕がない。彼らは膨れ上がる業務量とバーンアウト(燃え尽き症候群)の危機に直面しながら、より忍耐強く、物事を促進するようなリーダーシップのスタイルを要求されている。問題はどこにあるのだろうか。
費用も時間もかかるリーダーシップ研修で、このジレンマから抜け出そうと努力している組織もあれば、近道としてAIの活用を模索している組織もある。いまや人事市場にあふれているAIツールが管理職のルーチンワークを自動化できれば、理論上、コーチングスタイルのリーダーシップに取り組む余裕が生まれるだろう。あるいはもう一歩進んで、リアルタイムの指導や従業員のサポートを、新世代のAIのコーチングツールに委ねることもできるだろう。
これらのアイデアは真剣に検討する価値があるが、過剰に宣伝されてきたせいで混乱を招きかねない。
行動科学者である筆者らは、何が職場のパフォーマンスと文化を強化するかについて研究し、組織に助言している。そして、コーチングスタイルのリーダーシップを発展させようとするマネジャーのために、シンプルで、より管理しやすい方法があることを発見した。マネジャーに時間のかかるトレーニングプログラムに参加させたり、新しいテクノロジーを採用させたりするのではなく、彼らがすでに従業員と行っているやり取りをコーチングの機会に変えていくのだ。
これらのやり取りには、1on1や毎週のミーティング、プロジェクトレビューなど、日常の業務フローの中で行われるものもある。また、目標設定、フィードバックの会話、パフォーマンスレビュー、報酬など、組織のパフォーマンスのインフラを構成するものもある。しかし、いずれの場合も、マネジャーが「ジャストインタイム」の指導、ナッジ、動機付けを設計して、チームとの関係性を変えられるようにするためのものだ。
このアプローチは、筆者らが「日常的コーチング」と呼ぶもので、有意義な利益をもたらしうる。本稿ではその影響を評価するために、筆者らが製薬会社のアストラゼネカ、サンド、通信会社のボーダフォンの3社で数万人を対象に行った3つの実験について論じながら、このモデルを説明する。